女子サッカー

女子WEリーグは、アニメで『スラムダンク』とBリーグの成功を追える?

WEリーグ出場クラブ

日本の女子サッカーに未来はあるのか?

女子サッカーを取材して来た筆者は、コロナ禍以降様々な規制によって取材活動が困難になり、結局1年以上も執筆活動から離れた。しかし、ここ半年ほどでWEリーグが取り上げられる機会は多くなり、女子サッカーは近くなって来たように感じる。

今まで子供たちは「女子サッカーで食べていく、生きていく」という未来がイメージできなかった。プレーする選手たちや少女たちはもちろん、女子サッカーを指導する男性も含めた指導者や運営に携わるスタッフたちがポジティブな想いを乗せられるようになっているのであれば嬉しい。

『さよなら私のクラマー』では、主人公の恩田希がプレーする蕨西南高校女子サッカー部の監督が口にする「日本の女子サッカーに未来はあるのか?」というシリアスな台詞がインパクトを放っている。

実際の日本の女子サッカーは、2011年に女子W杯ドイツ大会を制し、2012年にはロンドン五輪で銀メダルを獲得。2015年にも女子W杯カナダ大会でも準優勝。育成年代でも2014年にU-17女子W杯を、2018年にはU-20女子W杯で優勝し、女子サッカー界で唯一の3世代完全制覇を成し遂げている。現状に問題はあるが、客観的にも近年の競技力でも世界トップレベルにはあるはずだ。

逆に男子バスケ界を見れば、2019年のW杯に出場したのが13年ぶりで、五輪に限っては今回の東京五輪が45年ぶりの出場となる。「日本人にバスケは向かない」と日本人から言われる状態から、今日のBリーグの成功に至っている。


田中美南 写真提供:Gettyimages

東京五輪イヤーに競技力の向上を怠っていないか?

6月18日、東京五輪に挑む、なでしこジャパン(日本女子代表)のメンバー18名とバックアップメンバー4名が発表された。なでしこリーグ1部で2016年から3年連続の得点王で、前年のMVPに輝きながら、2年前の女子W杯フランス大会でメンバー外になったFW田中美南も選出されている。

現在の日テレ・東京ヴェルディベレーザの生え抜きである田中は、その後2019シーズンも得点王とMVPに輝いたが、代表での立ち位置にはあまり変化は見られず。2020シーズンからはライバルであるINAC神戸レオネッサに移籍し、代表のエースである岩渕真奈との連携を確立。今年1月からは「WEリーグへ移行するまで公式戦がないため」、ドイツのバイエル・レバークーゼンにレンタル移籍し、国際舞台の中で本物の経験と最高のコンディションを携えて東京五輪のメンバーに招集された。

WEリーグは昨年のプレナスなでしこリーグ1部と2部を戦ったクラブから9チームが参戦し、新設された2チームを加えた11チームで初年度を迎える。しかし、今秋に開幕するWEリーグへ移行するため、WEリーグでプレーする選手に限っては今年9月まで公式戦を1度も戦わないままに東京五輪に挑むことになるのだ。

田中の他にも、岩渕(来季からアーセナル)がイングランドのアストン・ヴィラへ、長谷川唯もイタリアのミランへと代表の主力選手が国外へ移籍した。2年前のW杯メンバーながら昨年末の段階では当落線上だったはずの宝田沙織もアメリカのワシントン・スピリットへと渡った。彼女たちは恐らく、公式戦のないプレー環境を危惧していたはずだ。

WEリーグがテレビなどで報道されて取り上げられる機会は増えている。4月24日から6月19日に開催されたプレシーズンマッチにも多くのメディアが取材に訪れた。中には50人の取材者が訪れる試合もある。近年20人を越える取材者がなでしこリーグの1試合に集まる様子を見た記憶は、優勝や上のカテゴリーへの「初昇格」がかかる場合を除いて1度もない。

しかし、その裏で東京五輪までの半年以上に渡って公式戦がないという「空白期間」を生んでしまっている。もちろん選手達はピッチ外でリーグの魅力を発信し続けているのだが、リーグ側が競技力を軽視しているように見えるのは筆者だけだろうか? 「プレーヤーズ・ファーストの精神があるようには見えないリーグ」に見えてしまっているのは問題だ。

ようやくスタートするWEリーグ。注目と期待の高まる一方で、岩渕や長谷川のような「顔」となる選手がいなくなってしまった。今まで女子サッカーの競技力をしっかりと伝えられなかったメディアにその穴は埋められるのだろうか?自問している。

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