
東京都葛飾区で計画が進むサッカー専用スタジアムは、関東サッカーリーグ1部に所属し、JFL昇格、その先のJリーグ入りを目指す南葛SCのホームスタジアムとして予定されており、地域振興とスポーツビジネスを融合したプロジェクトとして注目されている。計画では東京23区初となる、J1基準を満たす約1万5,000人収容のスタジアムをJR新小岩駅近くに建設し、将来的にはクラブの魅力向上だけでなく、観光・商業拠点としての役割も担うことが想定されている。
このプロジェクトの最大の焦点は、土地取得費とは別に総額300億円規模に達する可能性がある建設費の負担構造だ。公設公営か公設民営か、それとも民設民営に近い形となるのか。さらに、その資金調達でカギを握るとみられるのが、南葛SC代表取締役社長を務める漫画家の高橋陽一氏の代表作『キャプテン翼』の版権収入である。クラブとコンテンツが一体化したビジネスモデルが、スタジアム建設という大型投資を支えられるのか。世界でも類を見ない挑戦的なプロジェクトだ。
公設民営を軸としつつ民間主導の色合いも
スタジアム予定地は、JR新小岩駅から徒歩約10分の東新小岩1丁目にある「東新小岩運動場(旧私学事業団総合運動場)」。葛飾区は2024年3月に約325億円でこの土地を取得済みだ。
現時点の枠組みでは、都市計画公園として整備する公設民営方式の採用が検討されている。具体的には、土地取得や一部インフラ整備は区が担い、スタジアム本体の建設や運営は民間の資金とノウハウを活用する形が想定されている。
ただし、2026年3月31日に高橋陽一社長と、代表取締役専務を務める岩本義弘氏が葛飾区に提出した要望書では、クラブ自身が整備費や運営資金の調達を担う方向で検討していることが示されている。この点から、完全な公設民営ではなく、民設民営に近い要素を含むハイブリッド型へ移行する可能性も出てきた。
建設費300億円の現実的な負担構造
2026年1月公表のヒアリング結果などでは、屋外型スタジアムの建設費は約210億から300億円と試算される。仮に300億円とした場合、その資金をクラブ単独で賄うのは困難であり、複数の財源を組み合わせる必要がある。
想定される主な収入源は「ネーミングライツ」「スポンサー・広告収入」「商業施設やテナント収益」「チケット収入(Jリーグ昇格後の観客増が前提)」となる。加えて、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ=官民連携)、PFI(民間資金等活用事業)、公募などを活用した民間参画も想定されている。
例えば、ネーミングライツを年間2億円で20年間契約と仮定した場合、総額は約40億円となる。これは建設費300億円のうち約13%に相当し、単体では不十分だが重要な柱の一つとなり得る。
『キャプテン翼』版権収入が担う役割
葛飾区の検討委員会は9月の第3回会合で、「『キャプテン翼』のブランド力を生かしたスタジアム作り」を素案に盛り込んだ。10月1日の第4回会合では、版権管理会社「TSUBASA」の社長も兼任している岩本氏から意見を聞く機会を設け、同氏も葛飾区の方針に賛同し、後押しする意向を示した。
これにより、新スタジアムで『キャプテン翼』という強力なIP(知的財産)を活用する方向性が示された。クラブオーナーである高橋陽一氏は、作品の収益を南葛SCに還元する方針を以前から公言しており、その実現に一歩近付いたといえる。
版権収入をスタジアム資金に充てるという公式な発表はまだない。ただ、一般的なキャラクターライセンス料は、国内作品なら売上の数%程度とされる。『キャプテン翼』の場合も、関連商品やイベントなどで一定の売上が継続的に生まれれば、ロイヤリティ収入がスタジアム建設や運営の安定化に寄与する可能性がある。
また、高橋、岩本両氏は3月の要望書で、スタジアム内に「キャプテン翼ミュージアム」を設置する構想も示している。入館料やグッズ販売などの直接収益に加え、世界的人気コンテンツであることから、インバウンドを含む観光客誘致による地域経済効果も期待される。
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