
8月26日、野球界に衝撃が走った。2026年春に開催されるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本国内独占配信権を、アメリカのNetflix(ネットフリックス)が獲得したと、大会主催者のWBCI(ワールド・ベースボール・クラシック・インク)と共同で発表したことが、日本語版Netflix公式サイトで正式にリリースされたのだ。
これにより全47試合はストリーミング配信され、従来の地上波テレビ放送は行われない可能性が高まった。日本球界や野球ファンは上を下への大騒ぎだ。
この事例は、単なる野球の話にとどまらない。スポーツイベントのグローバル化とストリーミングへのシフトが進む中、放映権料の高騰が「有料サブスク配信のみ」の流れを加速させる可能性が高い。特に、2026年に迫ったFIFAワールドカップ(W杯)北中米大会や、2028年ロス五輪、2032年ブリスベン五輪などで、同様の動きが起きる可能性がある。
これまでは当たり前だった無料地上波放送が消滅し、視聴者が料金を払ってストリーミングでスポーツ観戦をせざるを得ない時代が到来するのか。ここでは、その可能性を探る。

スポーツ放映権高騰の背景
あらゆるスポーツコンテンツは、視聴者を長時間にわたって惹きつけるライブ性が魅力で、広告収入やサブスク加入促進に直結。ストリーミング界の大手は、放映権獲得と独占配信によってユーザーを拡大させている。
Netflixは近年スポーツ中継参入を本格化させており、FIFA女子ワールドカップの2027年・2031年大会に関しても、アメリカ国内での独占放映権契約を結んだと報じられた。これにより、アメリカの主要ネットワーク(NBC、CBS、ABC、FOX)が独占してきた市場に変化が生じている。
今回の日本でのWBC独占配信を巡る動きも、スポーツ放映権の急激な高騰と、ストリーミングサービスの台頭を象徴するものだ。放映権料の高騰はグローバル入札の激化によるとされる。
WBC前回2023年大会の放映権料は約30億円規模と報じられており、今回の契約では大幅な上昇が見込まれる。複数メディアは150億〜200億円に達する可能性を推測。日本の放送市場(NHKおよび民放)は総務省や各社の財務資料から年間数兆円規模とされる一方、Netflixは四半期で1兆円を超える売上を計上しており、資金力の差が放映権獲得に影響したとみられる。
前回大会ではAmazonプライム・ビデオが放映権を取得し、日本のテレビ局やCSチャンネルとサブライセンス契約を結んだことで地上波中継も実現した。決勝の日本対アメリカ戦は関東地区で42.4%(ビデオリサーチ調べ)という高視聴率を記録したと報じられている。
一方で、スポーツニュースでの映像使用には「試合終了後36時間以内は1試合2分以内、1番組5分以内」など一定の制限が課されていたとされ、2026年大会ではさらに利用条件が厳しくなる可能性が指摘されている。
WBCI側はNetflixとのパートナーシップを「革新的」と位置付け、視聴者にオンデマンド視聴を提供すると強調。そしてこの契約は、日本のテレビ局や大手広告代理店、NPB(日本プロ野球機構)を全く無視した形で締結されたことも象徴的だ。
この流れはサッカー界にも
この流れがサッカー界に波及する兆しは既に見えている。2026年W杯は米国、カナダ、メキシコ共催で、史上最多104試合が予定され、その放送権料は巨額とならざるを得ない。
FIFA(国際サッカー連盟)の年次報告書によると、約39億2,500万ドル(約5,000〜6,000億円規模)と見込まれている。米国ではFOX Sportsが英語権利、Telemundoがスペイン語権利を保有し、ストリーミングではPeacockが配信を担う予定。また、fuboTV、Sling TV、YouTube TVといったサービスを通じても視聴可能になる見通しがある。
これらは有料サービスが中心で、無料視聴の機会は限定的だ。英国ではBBCとITVが2030年W杯まで権利を確保したが、デジタルプラットフォームでの配信を強化している。
日本国内では、これまでは電通が仕切った上でNHKや民放が権利を分け合ってきた。しかし、放映権料の高騰が続けば、WBCのようにサブスクによる独占配信に移行する可能性も出てくるだろう。
コメントランキング