若手選手 Jリーグ

「U-21 Jリーグ」を成功させるために乗り越えるべきハードル

日本代表 写真:Getty Images

U-21リーグ最大のメリットは?

U-21リーグに参戦するクラブは、有望選手の獲得や育成ノウハウに長けたクラブばかりで、数多くの若手選手を抱えている。ネット中継があり、有観客の有料試合で開催される方向で、オーバーエイジ(OA)枠も設定されたことで、モチベーションも変わってくることが期待できる。

最大のメリットは、トップチームで出場機会に恵まれない若手選手に対し、実戦経験を継続的に提供できる点だ。現在のJリーグでは、特に強豪クラブにおいて若手がトップチームの試合に絡むのは容易ではない。同世代のトップレベルの選手たちが真剣勝負を繰り広げることで、技術面や戦術理解度、さらには精神的なタフさが磨かれるだろう。これは将来的にトップチームで活躍するため、あるいは海外移籍を目指す上でも不可欠な要素だ。

また、これまで埋もれていた才能が、この大会を通じて他クラブの監督やスカウトの目に留まる機会が増えることも期待できる。同大会に参加していない他クラブが有望な選手を発掘する場としても活用する可能性もある。さらに、ユースから昇格させた選手を計画的に育成し、トップチームへスムーズに馴染ませるための“中継地点”として機能させるだろう。その結果、クラブの育成哲学をより深く浸透させることが可能となる。

U-21世代の強化戦略は、そのまま将来のA代表や五輪代表の強化に直結する。高レベルでの競争環境に身を置く選手が増えることで、国際大会で戦える選手が増加し、日本サッカー全体の底上げになり得るのだ。また、若手指導者にとっても貴重な経験の場となり、選手のみならず、指導者の育成という観点からも意義は大きい。実際、同大会に出場するチームの監督にJFA Proライセンス(旧S級ライセンス)は必要なく、Aジェネラルライセンスでも可能というルールになった。

育成の成功によって、トップチームで活躍する選手や海外へ移籍する選手を輩出できれば、クラブにとって大きな財産となる。移籍金ビジネスに好影響を与えるだけではなく、生え抜きスターが生まれることによるファン層の拡大、クラブブランドの向上などが期待できる。また、「育成型クラブ」としての評価が高まれば、有望な若手選手が集まりやすくなるという好循環も生まれるだろう。


Jリーグ 写真:Getty Images

U-21リーグが乗り越えるべきハードル

参加を決めた11クラブはJ1あるいはJ2上位のクラブで、育成面でも秀でたクラブが多い印象だが、まずはチームの実力差が大きいと、大会の意義が薄れてしまう危険が生じる。いかにして高い競技レベルを維持し、選手たちが真剣勝負を繰り広げられる環境を作るかが肝要だ。

また、ファンやメディアの関心を引くための工夫も求められる。Jリーグ側は将来のスター候補生が躍動する姿を積極的に発信し、大会の価値を高めていく必要があるだろう。

そのためには、トップチームの活動と連携し、若い選手たちが高い目標を持ってプレーできるような仕組みづくりが不可欠だ。かつてのサテライトリーグやエリートリーグのような単なる“二軍戦”と捉えられないよう、選手のモチベーションを高く保つ工夫が求められる。トップチームの監督が試合を視察し、U-21リーグでの活躍がトップチーム昇格に直結することを示すことは必須だ。

新たな大会を運営するには、遠征費、人件費など様々なコストが発生する。持続可能な運営体制を構築できるか、スポンサー獲得を含めた収益モデルを確立できるかがカギとなる。実際、資金的に余裕があると思われる参加クラブが多い現実がこの問題を示唆しており、Jリーグ側は参加しなかったクラブに対して、「なぜ参加しなかったのか」をヒアリングし、善後策に生かすべきだろう。

また、U-21リーグの誕生によって、Jユースカップや各地域リーグ、全国の大学リーグ戦など、既存の育成年代の大会やリーグとの関係性を明確にし、より効果的な育成システムを構築する必要があるのではないか。U-21リーグが他の育成カテゴリーの目標となるような位置づけになれば、相乗効果も期待できる。


懸念点は過密日程とコンディション管理

あえて懸念点を挙げるならば、過密日程と選手のコンディション管理面の不安だ。トップチームの試合に帯同しながらU-21リーグにも参加する場合、選手の疲労によってケガのリスクが高まることが考えられる。実戦経験の増加を目指して生まれたリーグ戦のせいで、過労によるケガ人が出てしまっては本末転倒だろう。

また、育成に対する考え方や投資できるリソースは、クラブによって異なることも考慮しなければならない。この格差が大会における競争力に影響を与える可能性もあるからだ。あくまでもU-21リーグの第一義は「育成」にあるのだが、勝利至上主義に偏りすぎたり、逆に緊張感のない試合が増えたりすると、本来の目的が見失われる恐れがある。

多くの有望な選手が実戦経験を積み切磋琢磨することで、個々の成長はもちろん、日本サッカー全体のレベルアップに繋がるという期待を秘めている「U-21 Jリーグ」。一方で、成功のためには上述のような乗り越えるべきハードルも存在する。主催するJリーグ、参加する11クラブ、指導者、選手が同じ方向を向き、この新たな試みを成功に導かなければならないだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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