
皇后杯JFA第46回全日本女子サッカー選手権大会準決勝の2試合が、1月18日にサンガスタジアム by KYOCERA(京都府亀岡市)にて行われた。同会場での第2試合で、三菱重工浦和レッズレディースとINAC神戸レオネッサが対戦。最終スコア4-1で浦和が勝利している。
昨年の皇后杯決勝でINACに敗れ、準優勝に終わった浦和。今回の準決勝でもINACに先制されたが、冷静に勝機を見出し、昨年の雪辱を果たした。
いかにして浦和が逆転勝利を収めたのか。また、この試合でINACが改善しきれなかった点は何か。ここではこの2点を論評するとともに、現地取材で得たINACのジョルディ・フェロン監督とDF守屋都弥、浦和GK池田咲紀子とMF栗島朱里の試合後コメントも併せて紹介する。

浦和vsINAC:試合展開
前半22分、INACが敵陣の深い位置でスローインを得ると、浦和DF後藤若葉のクリアボールをINACのDFヴィアン・サンプソンがカット。シュートチャンスを得た同選手がすかさずペナルティエリア内で右足を振り、INACに先制点をもたらした。
INACにワンチャンスを活かされたものの、浦和は慌てずにボールを保持。迎えた前半42分、MF伊藤美紀の敵陣でのボール奪取から浦和のパスワークが始まると、右サイドを駆け上がったDF遠藤優のクロスボールにDF高橋はながスライディングで合わせ、同点ゴールをゲット。前半アディショナルタイムには栗島のロングパスを受けた高橋がセンターサークル付近でボールを収め、相手最終ラインの背後へパスを送る。このパスを受けた浦和FW島田芽依が、相手GK大熊茜との1対1を制した。
後半21分にも、栗島のロングパスのこぼれ球を高橋が敵陣で収め、ラストパスを繰り出す。このパスを受けたMF塩越柚歩が相手GK大熊との1対1を制すると、同28分には塩越のスルーパスを受けた伊藤が敵陣ペナルティアークからシュートを放ち、ダメ押しのゴールを挙げる。試合全体を通じ、いち早く高橋にボールを預ける浦和の作戦が功を奏した。

INACの攻撃停滞の原因は
この試合における両チームの基本布陣は、浦和が[4-2-3-1]でINACが[3-4-2-1]。INACは右ウイングバックの守屋が低い位置へ下がることで、4バックにも見える布陣を時折敷いていたが、GKや最終ラインからのパス回し(ビルドアップ)は[3-4-2-1]を軸に行うことが多かった。
INACはヴィアン・サンプソン、三宅史織、井手ひなたの3DF(3バック)を起点に攻撃を組み立てようとしたものの、サンプソンと右ウイングバック守屋の距離が開きすぎてしまい、ゆえにこのパスルートが開通しない場面がしばしば。俊足を活かしたサイド突破や、正確なクロスボールに定評がある守屋にボールを集めることができないINACの攻め手は、最終ラインから長身FWカルロタ・スアレスへのロングパスに限られていった。

「味方と意図が合わなかった」
試合後に筆者の取材に応じた守屋は、自軍のビルドアップの不具合に言及している。浦和MF高塚映奈(左サイドハーフ)が守備時に下がることで生まれるスペースを、誰が使うのか。この点が曖昧だったようだ。
ーINACのビルドアップについてお伺いします。ヴィアン・サンプソン選手と守屋選手の距離が開いている印象を受けました。これがINACのパスが繋がりにくかった原因のひとつだと思っているのですが、守屋選手はどう感じていらっしゃいますか。
「自分が高い位置をとると、高塚選手が下がっていました。それによって空くスペース(サンプソンの手前)を味方に使ってほしかったんですけど、その意図が味方と合いませんでした。これがサンプソン選手と自分の距離が遠いという事実に繋がったのかなと思います。あのスペースをボランチの選手やサンプソン選手が使えていれば、もう少し高い位置でビルドアップできたのかなと思っています」
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