2024シーズン明治安田J3リーグ3位で、J2昇格プレーオフを勝ち抜き、2025シーズンはJ2リーグを戦うカターレ富山。2014シーズン以来、実に11シーズンぶりのJ2となる。そんなクラブにさらなる朗報がもたらされた。
富山が本拠地とする県内初のサッカー専用スタジアムの建設構想について、富山県サッカー協会のサッカースタジアム建設特別委員会の豊岡達郎委員長、遠藤忠洋副委員長らが12月16日に会見し、JR富山駅東エリアを候補地とする計画を発表。2030年前半の開業を目指すと明言した。
ここでは富山の新スタジアム構想の詳細と、全国的なスタジアム建設の傾向と裏側について考察する。
富山の新スタジアムの構想
JR富山駅南口から徒歩5分にあるボウリング場「地鉄ゴールデンボウル」「パレブラン高志会館」「富山県教育記念館」など、築年数が40年以上の施設を再開発する形で、2025年度に具体的な事業計画が策定される富山の新スタジアム。
2026年度から用地取得や設計などに着手し、収容人数1万から1万5,000人を想定し、さらにスタジアム周辺には大学や複合商業施設などを誘致、駅周辺のにぎわい創出につなげる狙いで2030年代前半の開業を目指しているとのこと。実現した暁には全国でも有数の“まちなかスタジアム”となる夢のようなプランだ。
富山では、2015年に北陸新幹線が延伸。東京駅から最速2時間5分となり、首都圏からも一気に身近な観光地となった。駅から徒歩圏内とあって、飲食店やホテルなども密集していることからスタジアムへの集客が見込まれると期待されている。
一方、建設候補地には、営業中の店舗や施設、市道も含まれるため、県サッカー協会は、県や市と連携しながら、建設に必要な約3ヘクタールの敷地を確保するため、土地所有者との交渉を進めていくことになる。「スタジアムを核にしたまちづくりで富山を元気にする」とのビジョンを掲げ、「富山のシンボル・関係人口の拡大・魅力あるまちづくり」という3つの基本コンセプトの下、カターレ富山や県サッカー協会のみならず、自治体や地元産業界を巻き込んだビッグプロジェクトとなる。
豊岡委員長は「ワクワクドキドキする空間を作り出し、富山を活気付けたい」と語り、公設民営方式で実現を目指すと発表。県や市に協力を求めるため、県民の署名も募るようだ。また、建設の一部について民間資金の活用も視野に入れ、今後、民間事業者の投資や寄付を募る計画だ。
新スタジアムに沸いた2024シーズン
2024シーズンは、新スタジアムに沸いたシーズンでもあった。J1サンフレッチェ広島の「エディオンピースウイング広島」。J3ツエーゲン金沢の「金沢ゴーゴーカレースタジアム」。そして特に注目を集めたのが、J2のV・ファーレン長崎の本拠地のサッカー専用スタジアム「ピーススタジアム Connected by SoftBank」。同スタジアムを中心に、アリーナやホテル、商業施設、オフィスなども併設した革新的な複合施設「長崎スタジアムシティ」が開業し、活況を呈している。
富山の同特別委員会は、来季J2に昇格するFC今治の本拠地で民設民営によって運営されている「アシックス里山スタジアム」や、富山の新スタジアムと同様の公設民営の「エディオンピースウイング広島」も視察。
同委員で県サッカー協会の横井憲治専務理事は「スタジアムを大きく分けると、公設公営、公設民営、民設民営という形がある。民設民営の今治は郊外型で、地域に開かれて、日常的に使っている。広島は公設民営の街中型で、規模も非常に大きく、人が交流し、収益化する仕組みも作っていた。非常に参考になった」と話す。
「長崎スタジアムシティ」の建設にあたっては、通信販売大手のジャパネットホールディングスが総工費900億円を投じた。「エディオンピースウイング広島」は行政が主導して総工費270億円で建設。「アシックス里山スタジアム」はオーナーで元日本代表監督の岡田武史氏がリーダーシップを発揮し、新スタジアム計画を実現させた。
横井専務理事は「昔なら行政がポンとお金を出して完成すればOKでしたが、今の時代ではみんなが納得しない。時間をかけてやっていくことで、協力者や理解者は増えていくと思っています」と、有力企業や自治体の協力を取り付ける試みを地道に続けることが重要という考えを示す一方で、「カターレにポテンシャルがあると感じているし、J2に昇格するとなれば、そのタイミングで一気にということもある。周囲ではスタジアム建設の話もよく聞かれるようになった」と、手応えを感じている。
今シーズン富山は、ルヴァン杯3回戦のJ1ヴィッセル神戸戦で8,223人、同プレーオフ第2戦のJ1北海道コンサドーレ札幌戦では7,701人を集め、J2昇格プレーオフ決勝の松本山雅戦では1万1,847人を記録した。
富山が現在本拠地としている富山県総合運動公園陸上競技場は約25,000人のキャパシティーを誇るが、富山空港からは近いものの、JR富山駅からバスで約30分と、アクセスの悪さが課題となっていた。新スタジアムが本格運用となれば、アウェイサポーターにとっても、観光を兼ねた来訪が増えるだろう。
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