10月6日の明治安田J2リーグで、V・ファーレン長崎の新スタジアム「PEACE STADIUM Connected by SoftBank(ピースタ)」のこけら落としの一戦が行われ、長崎は大分トリニータを4-1で一蹴し、1万9011人の観衆を集めた記念すべき一戦を快勝で飾った。
この他にも今2024シーズンには、J1サンフレッチェ広島のホームスタジアム「エディオンピースウイング広島」、J3ツエーゲン金沢の「金沢ゴーゴーカレースタジアム」が2月に開業。2023年にはJ3のFC今治の新スタジアム「アシックス里山スタジアム」、2021年には長居球技場を全面改装した形でオープンしたJ1セレッソ大阪のホームスタジアム「ヨドコウ桜スタジアム」、2020年にはJ1京都サンガの「サンガスタジアム by KYOCERA」、2017年にはJR小倉駅からわずか500メートルの場所にJ3ギラヴァンツ北九州のホームスタジアム「ミクニワールドスタジアム北九州」と、続々とサッカー専用スタジアムが開業し、Jリーグは新スタジアムラッシュに沸いている。
欧州でも、ラ・リーガの名門バルセロナのホームスタジアム「カンプノウ」が現在全面改装中で、今2024-25シーズンから部分開業、2026年には新カンプノウが完成する予定だ。サポーターにとって、贔屓クラブのホームスタジアムは“家”であると同時に“聖地”でもある。新しくてキレイであればあるほど居心地は良く、我がクラブを誇りに感じる効果もあるだろう。
しかしながら、欧州5大リーグでも、老朽化したスタジアムを新築できる裕福なクラブばかりではない。筆者も欧州サッカー観戦を経験した中で、「ここで試合するの!?」と驚かされたスタジアムに遭遇したことが何度もある。ここでは、古くとも、長くサポーターから愛され続けるスタジアムを紹介したい。
カンポ・デ・フトボル・デ・バジェカス
場所:スペイン、マドリード
使用クラブ:ラージョ・バジェカーノ(ラ・リーガ)
筆頭に挙げたいのは、今2024/25シーズンのラ・リーガで健闘している(9節終了時点で3勝2敗4分けの8位)ラージョ・バジェカーノのホームで、通称バジェカスと呼ばれている同スタジアムだ。
開業は1976年。もうすぐ半世紀を迎える。1924年のクラブ創設後、半世紀にわたり、本拠地を転々とした後、現在のスタジアムに落ち着き、クラブも一時期は2部B(実質3部)にまで成績を落としていたが、今や、レアル・マドリード、アトレティコ・マドリードに次ぐ「マドリード第3のクラブ」の地位を確固たるものにしている。
スタジアムのあるバジェカス地域は、マドリード市内でも治安の悪い場所というレッテルを貼られている。1991年、ある10代の少女が奇妙な死を皮切りに、次々と不審死の連鎖が起き、超常現象も頻発したことで、「霊の仕業ではないか」という噂も流れた。この一連の出来事は「バジェカス事件」と呼ばれ、2017年にこの事件をモチーフにしたスペイン映画「エクリプス」が公開されたことで、“バジェカス地域は危ない”というイメージが固定化してしまった。
しかし筆者は、この地域からそうした危ない空気を感じたことはない。少なくとも、試合日に関しては安心して訪問できる場所だ。
スタジアム周辺は、試合前になるとラージョを愛する老若男女が集い、どこか牧歌的な雰囲気を感じる。元々、昇降格を繰り返すエレベータークラブであるため、「勝ち試合が見たい」というよりも「おらがチームを応援したい」という温かい空気に包まれる。
中に入ると、その古さやボロさだけではなく、明らかに狭さを感じる。それもそのはず、FIFAが定めたピッチの標準サイズ「縦105メートル×横68メートル」よりもはるかに小さい「縦100メートル×横65メートル」しかないのだ。国際試合が開催できる最小サイズ「縦100メートル×横64メートル」はクリアしているものの、そのピッチサイズの狭さ故、ラージョのサッカーはボール奪取からの素早いカウンターアタックが確立されており、レアルやバルセロナといった強豪クラブも、狭いピッチと鋭いカウンターに度々苦しめられている。
さらに、集合住宅に囲まれている上アウェイ側ゴール裏席がなく、遠征してくるアウェイクラブのサポーターがバックスタンド最上段の一角に押し込められるのも、このスタジアムの特徴だ。当然、応援チャントも届くことはなく、“アウェイの洗礼”を浴びせるには十分なのだ。
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