明暗を分けたわずかな差
両チームのストロングポイントが噛み合い、チャンスはあれど守備陣や双方のGK朴一圭(鳥栖)GK村上昌謙(福岡)がそれぞれ質の高いセーブを見せ、ゴールを許さない状況が続く。試合が動いたのは前半終了間際の45分。明暗を分けたのはわずかな差だった。
鳥栖のMF岩崎が背後へのボールに反応し、福岡のDF湯澤聖人との競り合いを制して決定的なシュートを放つ。しかしGK村上が好セーブ。DFグローリが大きくクリアすると、MF金森が拾いカウンター発動。背後に走るFWルキアンへ送られたスルーパスはFW山岸を経由し、最後はゴール前に走り込んだMF金森が左足を振り抜いて、ボールは鳥栖の選手に当たりながらもネットを揺らした。決定機は双方に訪れていたが、決め切った福岡が先制に成功した。
この試合ではVAR(ビデオアシスタントレフェリー)も勝敗に大きく関与した。福岡先制の場面では、オフサイドの有無についてチェックが入りゴールが認められた。
また、その直後の前半アディショナルタイム4分、鳥栖にビッグチャンスが到来した場面では、福岡のGK村上が弾いたボールを鳥栖のMF長沼洋一が拾い決定的なシュートを放つも、これが福岡のDF小田逸稀に当たり、西村雄一主審が出した判定はPK。しかし、VARのOFR(オンフィールドレビュー)の結果、PKは取り消されている。
緊迫の後半、VAR判定に泣いた鳥栖
試合後半、逆転を目指す鳥栖が圧力を強めていく。54分にはMF長沼のクロスが福岡の選手に当たりポストを直撃。さらにゴール前へとこぼれたがDF湯澤が懸命にクリアし事なきを得た。福岡も64分、FWルキアンが決定的なヘディングシュートを放つが、ここはクロスバーに当たりゴールとはならず。
鳥栖は次々と交代のカードを切り、83分にはMF長沼が得点の匂いを感じさせるミドルシュートを放つがゴールならず。87分には途中出場のFW横山歩夢が右からのパスを受けついにネットを揺らした。土壇場での同点ゴールかと思われたが、ここでもVARが介入しオフサイドの判定に。「決め切る力」と「VARによる正確な判定」というわずかな差が勝敗を分け、福岡が得意のウノゼロ(1-0)で勝利を挙げた。
2022シーズンから3試合連続で引き分け(0-0、1-1、0-0)が続いていた九州ダービーは、4試合ぶりに勝敗を明確にして終了。「死闘になる」と話していたMF金森は、試合後に「夢に見るくらいこの試合のことを考えていた」と明かした。両チームでプレー経験があり九州ダービーについて知り尽くしている29歳の金森は、並々ならぬ集中力でこの試合に臨み、自らの足で決着をつけたのだった。
試合を終えJ1での順位は福岡が8位、鳥栖が10位。共に来シーズンもJ1で戦う可能性が高い。1度味わうと病みつきになる「本物のダービー」が、再び最高峰J1の舞台で見られることが楽しみでならない。
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