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東京V、前監督パワハラ問題で報道に釘差し!報告書の内容は公表せず…

東京ヴェルディのサポーター 写真提供: Gettyimages

 明治安田生命J2リーグの東京ヴェルディは永井秀樹前監督のパワーハラスメント(パワハラ)行為が問題視されていた。その中、クラブは21日夜、「『トップチーム運営状況に関するコンプライアンス委員会』からの調査結果を受けて 東京ヴェルディ株式会社としての処分及び再発防止について」と題した公式声明を発表した。

 東京ヴェルディの永井秀樹前監督を巡っては、パワハラにより選手に対して精神的苦痛を与えていたと伝えられている。また、一部メディアはクラブによる調査が進んでおらず、東京ヴェルディの選手会がJリーグに対して意見書を提出したと報道。クラブの主導でパワハラ問題が隠ぺいされる可能性を指摘していたが、東京ヴェルディは7月下旬から4度にわたってJリーグに対して調査の進捗状況を報告していることから、隠ぺいには当たらないと主張していた。

 また、週刊誌『FRIDAY』や『デイリー新潮』など複数メディアが永井秀樹前監督のパワハラ行為に及んでいる際の肉声をはじめクラブの内部情報を報道。これに対して、東京ヴェルディは「当クラブが調査を委ねているコンプライアンス委員会の調査中であるにもかかわらず、当クラブ及び調査対象者(当クラブのスタッフ・選手含む)のプライバシー保護が守られておらず、また、コンプライアンス委員会の調査に対しても支障をきたす可能性があることから、当クラブとしては非常に遺憾であり、しかるべき対応を検討いたします」と法的措置の構えを見せていた。

 その中、クラブは21日、永井秀樹前監督を巡る問題の調査で「『トップチーム運営状況に関するコンプライアンス委員会』による調査及びモニタリング結果が記載された報告書を受領しました」と報告。ただ、報告内容に関しては「報告書の結論やそこに至る理由には、対象者の特定や憶測につながるような内容が多数含まれており、公表によって、同報告書中の記載に関連して、選手、スタッフその他の関係者に対する新たな詮索が行われることが懸念されました。そこで、選手、スタッフその他の関係者に対する新たな詮索が生じる可能性を最小限にするため、代表取締役社長として、同報告書の内容を対外的には、開示しないことを決断しました」としており、前監督がパワハラ行為に及んでいたことに言及しなかった。

 また、報道機関に対しては「本件では、少なくとも4件の週刊誌(スポーツ紙を含む)の記事が報道され、当該報道により、実名が表示され又は実質的に対象者が特定される事態が生じています。また、その中には、報道に記載された事実だけをもって、一方的な評価を記載することには、報道の対象とされる者への手続保障の観点から、疑問を持たざるを得ないものもありました」

 「繰り返しになりますが、報告書の内容の全部非開示を決断したことには、トップチームの選手・スタッフのプライバシーを保護し、匿名性を担保する必要性があります。トップチームの選手・スタッフへのこれ以上の詮索は、以後お控えいただくことを、代表取締役社長として強くお願いさせていただきます。最後になりますが、今後、東京ヴェルディ株式会社が将来にわたって社会の範となる組織となるよう、これまで以上に経営再生に向け取り組んで参ります」とパワハラ問題に関する報道を控えるように再度求めている。

 なお、東京ヴェルディ株式会社の中村考昭代表取締役社長は「本シーズンより東京ヴェルディ株式会社の経営再生を担う立場にありながら、チーム内に生じていた問題の発見及びその速やかな改善ができておらず、かつ、それらの端緒がメディアを通じて問題提起されることとなったことにつき、ファン・サポーターの皆様、ボランティアの皆様、スポンサーの皆様、ホームタウンの皆様、Jリーグ関係者の皆様、また東京ヴェルディに関わる全ての皆様に、心より深くお詫び申し上げます。また、一連のメディアによる実名報道またその報道を通じて実質的に個人が特定されることとなり、そのプライバシー及び個人の尊厳を過度に傷つけられることとなった全てのチーム関係者に対しても、深くお詫びいたします」

 「今回のコンプライアンス委員会の調査結果につきましては、その調査結果の全てをJリーグに報告の上、東京ヴェルディ内ではプライバシーに配慮する範囲でその事実を適切に報告共有の上、調査結果に基づき関係各人に対して適正な処分を行うこととしました。また、それ以上に重要なのは、再発防止策だと考えておりますので、これから、チーム内の信頼関係の醸成を含め、このような問題が再び起きることがないよう真摯に取り組んで参ります」

 「今回の問題が起きた最大の原因は、チーム内で起きた事象について、コミュニケーションを通じた、チーム内での解決ができなかったことにあると考えています。もとより、サッカーはチームスポーツであり、勝利を目指して、またそれを通じてファン・サポーターの皆様に感動を与えられるようなクラブになることを目指して、ときには、意見をぶつけあうことも必要です。それは、同じ目標を共有した仲間達の中で行われる限りは、一時的には対立のように見えても、どこかでは必ず分かり合うことができるはずのものです。今回の問題は、本来はそのような目標を共有するはずである仲間達の中での解決ができずに、その解決方法として外部への告発が行われたものであって、そのような手段をとらざるを得なくなったクラブ内のコミュニケーションのあり方自体が、本質的な問題だったと考えます。それは、社長である私に、大きな責任があるものと考えております」こ

 「これから、ヴェルディを、本来あるべき姿、すなわち、勝利を目指して、仲間達が十分なコミュニケーションのもとに、同じ目標に向かって行く組織に変えていくためには、我々の努力ももちろんですが、関係者の皆様のご協力も不可欠です。たしかに報道された事実の有無や、誰が被害者なのかについて明らかにすべきだという意見もあるかもしれません。しかし、ヴェルディがこれから一つになっていくべきこのタイミングで、これ以上、メディアによって過去の事実の存否や責任が詮索され続けることは、すでに長期にわたるヒアリングや外部からの報道にさらされたことにより、尋常ではないレベルにまで到達したチーム関係者の精神的負担を考えると、どうしても避けなければならない事態であると、私は考えます。同じ目標に向かって結束すべき仲間達を、そうした精神的負担から守り、その人格と尊厳を維持しながら、チームとして一つにしていくことは、代表である私の責務であると考えます」

 「今回の度重なる報道について、そうしたチームとしてのあるべき姿を考えながら、どのレベルまで、皆様にご報告するべきかについては、私自身も少なからぬ葛藤がありました。プライバシー及び人格と尊厳を守ることを最優先にしたため、コンプライアンス委員会の調査に時間がかかったことについても、関係者の皆様に大変ご心配をおかけしたものとして申し訳なく思っております。しかし、調査を終え、私自身が感じたことは、まず、誰かを責めるよりも、クラブ、会社自身が変わっていかなければならないということです。共通の目標に向かって、チームを一つにしていかなければならないということです。それに向けての道は、決して平坦なものではないと思いますが、可能な限り、その過程を、皆様と共有しながら、強いヴェルディを、全員で作り上げていきたいと思います。そのような判断から、今回の調査結果について、関係者外非開示とさせて頂くことにつき、ぜひともご理解賜りたくよろしくお願い申し上げます」

 「なお、私自身の処分につきましては、東京ヴェルディ株式会社の代表取締役社長でありその経営再生を担う私にその責任がありますので、改めてお詫びの上、真摯に受け止め、また合わせて東京ヴェルディを再び素晴らしいクラブへと改善成長させるために、引き続きクラブの再建に取り組んで参りたいと思います」

 「末筆となりますが、トップチームの選手・スタッフその他の関係者に、長期間にわたる調査やモニタリングにご協力をいただいたことにつきまして、改めまして深く感謝申し上げます。当社は、選手・スタッフの匿名性を守り、今後のサッカー関連活動その他の社会活動への支障を生じさせないよう、選手・スタッフその他の関係者を守ることを、最優先に今後も行動していきます」と今回の問題の責任をとって辞任することはなく、引き続き代表取締役社長として経営再建に努める姿勢を打ち出している。