女子サッカー

なでしこに必要なもの、バスケ女子日本代表にあり!五輪史初のベスト4進出チームと比較

バスケットボール日本代表の渡嘉敷来夢 写真提供:Gettyimages

史上初ベスト4進出の女子バスケチーム

なでしこジャパンの再建へ向けて参考にして欲しいチームがある。五輪史上初のベスト4進出を決めたバスケットボール女子日本代表チームである。準々決勝ベルギー戦(8月4日)では最大13得点差をひっくり返し、ラスト15秒で大逆転勝利を飾った。準決勝では1次リーグで勝利しているフランスと対戦予定。もう一方の準決勝を戦うアメリカとセルビアと共に、メダルを懸けた白熱した試合が続く。

日本女子バスケは世界ランキングで10位。準々決勝で下したベルギーは6位、準決勝で対戦するフランスは5位である。五輪6連覇中の絶対女王アメリカが1位で、セルビアは8位。女子サッカーの世界ランキングと立ち位置が共通する部分は多い。

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また、なでしこジャパンが欧米勢の高さや強さに屈したように、女子バスケ界でもその劣勢は変わらない。むしろフィジカルの差は女子サッカーよりも大きいくらいだ。193cmという圧倒的な高さを持つ日本女子バスケの絶対的エース渡嘉敷来夢は、昨年末に右膝前十字靭帯断裂の大怪我を負って回復も間に合わずに今大会のメンバーから外れている。長くアメリカでプレーして来た渡嘉敷は唯一世界の強豪国を相手に高さで互角に渡り合える存在だった。(ちなみに渡嘉敷は、元なでしこジャパン川澄奈穂美と同じアメリカのシアトルでプレーしていたこともあり大親友)

2017年から代表チームを率いるトム・ホーバスHC(ヘッドコーチ=サッカー界では「監督」に相当)は、その渡嘉敷にさえもインサイドで高さを活かしたポストワークをこなすのではなく、アウトサイドから3ポイントシュートを狙うことを薦めていた。コート内の5人全員がアウトサイドに位置する場面がある独自の戦術を浸透させて来たのだ。渡嘉敷の欠場が決まっても、穴を埋めるのではなく戦術的に先鋭化させたことが功を奏している。

バスケでは、3ポイントラインより外の選手をフリーにさせるためには、インサイドへ果敢にドライブ(ドリブルのこと)で切り込み、相手を引き付けるプレーが必要不可欠である。そして、切り込んだ選手がそのままゴール下までドライブして自ら得点を挙げて相手の脅威になれるかどうかも大きなポイントである。

その大役を担う司令塔の町田瑠唯は、今大会4試合で51アシストを記録。1次リーグ第3戦のナイジェリア戦では五輪レコードタイとなる15アシストを記録するなど、目下、今大会のアシスト女王である。身長162cmで小柄な町田はボールに触る前からドライブする体勢に入っている。数々の写真に収められている通り、躍動感のあるドライブは膝から下の可動域が極端に広く、1人だけ風に乗っているかのように見える。

日本国内の女子バスケットボールトップリーグ「Wリーグ」でも4年連続のアシスト女王である町田は「自分でシュートを決めるつもりでリングにドライブしてこそパスが活きる」とアシストの秘訣について言及する。変幻自在のパスでアシストを量産するが、プレースタイルのベースにあるのは相手のマークを引き付けるスピーディーで鋭いドライブだ。課題の得点力は未だに解消できてはいないが、試行錯誤して一巡した末に現在の町田がある。原点回帰しただけでなく引き出しが増え、味方を活かすためのプレーも増えている。


バスケットボール日本代表の高田真希 写真提供:Gettyimages

これをやれば絶対に世界で勝てる!

バスケ女子日本代表チームをまとめるのは主将の高田真希。オールスターゲームのハーフタイムに食事宅配サービス「ウーバーイーツ」配達員のコスプレをして差し入れを運んできたり、「ゲームを作れるセンター」とプレースタイルを表現されたことに対して「テレビゲームを作ってる工場みたい」と発言するようなお茶目な一面を持つ。

中学まで習っていた空手では黒帯という武闘派の高田は、今大会でもゴール下で圧倒的な劣勢である日本でチーム最長183cmの身体を投げ出して攻守に奮闘。ここぞの場面では相手を背負ってでも強引にシュートを決めている。また、昨年4月にはスポーツイベントなどを企画運営する「株式会社TRUE HOPE」も立ち上げた“社長”でもある。

そんな高田は「トム・ホーバスHCのバスケをやれば絶対に世界で勝てる!」と宣言。来日30年が経過したホーバスHCも「みんなならできると思うよ!ワタシ信じてる!」と語りかけるような言葉で試合中のタイムアウト時にもチームを熱くさせる。主将の高田の周りには自然とチームメイトが集まり、全員がホーバスHCと仲間を信じて一丸となって戦っている。

フィジカルで圧倒的に不利な日本は、試合のペースを上げることで他国との違いを作っている。ホーバスHCが「みんなは世界で1番練習してきた」と称えるように練習量やスタミナを武器に、2度追い、3度追いは当たり前。サッカーで喩えると「インテンシティ」に相当する部分で勝負している戦い方は、なでしこジャパンだけでなく、男子のサッカー日本代表の参考にもなるだろう。

何よりも彼女たちは強敵に対して楽しそうな表情でプレーし、観ていて爽快なチームである。かつてのなでしこジャパンも、強敵相手に思い悩むよりも楽しみにしていたように見えた。なでしこジャパンが忘れてしまっているものを、バスケ女子日本代表チームは持っているのではないか。

東京五輪の女子バスケは8月6日に準決勝(13:40〜アメリカ合衆国 vs セルビア)(20:00〜日本 vs フランス)が行われ、勝者は8月8日の決勝へ。サッカー競技の敗退直後で気持ちの切り替えができない時には、女子バスケを観てみるのを熱烈におススメしたい!

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