Jリーグ

「五輪&W杯男」41歳MF稲本潤一、J2相模原と共に上げる復活ののろし!

稲本潤一(2010 FIFAワールドカップ)写真提供:Gettyimages

相模原で復活ののろしを上げる稲本潤一

そして攻守が組織的になってきた相模原の改革に出現してきたのが、41歳の元日本代表MF稲本潤一である。稲本と言えば「2002 FIFAワールドカップ日韓大会」開幕戦と第2戦(ベルギー戦とチュニジア戦)で2試合連続ゴールを決め、日本を初の決勝トーナメント進出に導くなどした日本代表でもレジェンド的なプレーヤーだ。W杯には日韓大会から3大会連続出場。五輪でも2000年のシドニー大会に出場し、予選リーグ第2戦のスロバキア戦では決勝点を挙げた。五輪とW杯の2つの大舞台でゴールを記録した日本人選手は、これまで中田英寿氏と稲本の2人だけである。

中盤でのボール奪取からそのままゴールに直結するようなダイナミックな攻守を見せる国際的ボランチである稲本は、ノーステップでもサイドチェンジのロングフィードを蹴ることができる。球際での強さなどフィジカル能力にも優れ、2001年にはイングランドの強豪アーセナルに引き抜かれた。以後、イングランドやトルコ、ドイツ、フランスと4カ国7クラブで計8年半に渡って海外でプレーした豊富なキャリアを持つ。

そんな稲本は2019年から相模原でプレー。加入1年目で当時のJ3最年長ゴールを記録したものの、J3での2年間では合計10試合にしか出場できていない。怪我もあったが、特に昨季は19試合でベンチ入りして交代枠が5枠あったにも関わらず、僅か1試合(45分間)の出場に終わっていた。今季も第4節の大宮アルディージャ戦で初出場(先発)して以降は出番がなく、三浦前監督の下では天皇杯1回戦の駒澤大学戦に先発出場したのみ。リーグではベンチ入りもしていなかった。

しかし、高木監督就任後の公式戦2試合目となった天皇杯2回戦の北九州戦で稲本に転機が訪れる。直近のJ2第17節の長崎戦から先発11人全員変更の完全ターンオーバー要員に過ぎなかった先発出場の機会だったのだが、駒沢大学を3-1と破った1回戦に続き、同じJ2の北九州を相手に1-0と勝利。泥臭くも確かな結果を残したのだ。

その天皇杯北九州戦から4日後のJ2第18節、稲本は敵地の水戸ホーリーホック戦でベンチ入り。第4節以来の途中出場を果たすと、ここから3試合連続の途中出場。合計僅か35分間のプレータイムにも関わらず3本のシュートを放つなど若手さながらの積極的なプレーでアピールし、第21節の北九州戦で先発に抜擢された。この試合こそスコアレスドローに終わったものの、次節の琉球戦でも先発し、12試合ぶりの勝利と2試合連続の完封に貢献した。

続く五輪中断期間前最後の第23節、0-1と惜敗した「相武決戦」町田ゼルビア戦でも稲本は先発。今季すでにリーグ7試合(先発4)に出場し、プレータイムも245分間に伸ばしている。怪我もあってリーグ戦では過去5年合計で791分間の出場に留まっている稲本にとって、今季は復活を期すシーズンとなっている。


SC相模原MF稲本潤一(北海道コンサドーレ札幌時代)写真提供:Gettyimages

41歳稲本を支える錆びつかない技術と経験

とはいえ41歳のMF稲本は、かつてのようなフィジカル自慢のプレーを見せているわけではない。かつては日本代表で一時代を築いた“炎の左サイドバック”都並敏史に「稲本選手にタックルに行ったのに逆にぶっ倒されたこと」がキッカケで現役引退を決意させたエピソードもあるほどだが、現在はピッチ上で倒される場面も増えた。

現在の稲本を支えているのは、年齢を重ねても錆びつかない確かな技術と、クラブや代表問わずに国内外で培った豊富な経験に裏打ちされたポジショニングの妙である。

稲本の真骨頂である中盤でのボール奪取力は、チームとしての組織的守備の中で活きる個人技だ。無論若い時ほどボール奪取の成功率も低くくなっている中、ボールを“狩り”に出ることはチームの守備ブロックに穴を空けるという意味ではリスクでもある。しかし、その要所を見極めてボール狩りに出る姿は、かつての勢いによるものではなく、老練さを感じさせる。

シドニー五輪から21年、日韓W杯から19年が経った現在、日本では東京五輪が開催されている。そしてJ2最下位の位置からは、相模原と共に稲本が復活ののろしをあげている!

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