サッカーファンは東京五輪よりもJリーグに関心がある?東京五輪で女子日本代表なでしこジャパンが格上のイギリス代表を相手に0-1と惜敗した同日の7月24日、明治安田生命J1リーグ第2節ガンバ大阪VS鹿島アントラーズの試合が行われた。
G大阪では2021シーズン開幕直後に新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生し、リーグ6試合分が未消化となっていた。さらに、6月下旬からはウズベキスタンで集中開催されたAFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージに参戦していたため、東京五輪によるJリーグ中断期間に未消化分のリーグ戦がスケジューリングされたのである。
ACLでJリーグ勢唯一のグループステージ敗退
G大阪はJリーグ勢で唯一、ACLでグループステージ敗退となった。6試合で2勝3分1敗の結果。敗因はタイのチェンライ・ユナイテッドに2試合とも引き分けてしまったことである。そして、突破には勝利が絶対条件となったグループステージ最終節で、韓国の全北現代モータースを相手に敗れた。帰国後の初戦となったJ1第21節のアビスパ福岡戦は1-0で勝利したものの、第22節「阪神ダービー」ヴィッセル神戸戦は1-2で敗れ、続く鹿島戦も0-1と惜敗。J1リーグで2連敗となった。
今季のG大阪は前述した開幕直後のクラスターにより、トレーニングを始めとしたチーム活動の大幅な制限を強いられた。活動再開後のJ1リーグでもその影響が見られていたが、チームにとって10戦目となったホームでの第20節(5月12日)サンフレッチェ広島に1-2で敗れた直後、宮本恒靖監督の解任が発表された。
宮本前監督は2018シーズンの途中から指揮を執り、就任4年目。昨季はJ1と天皇杯でチームを準優勝に導いたが、今季はJ1リーグ10戦で1勝4分5敗の勝点7。何よりも攻撃サッカーで鳴らした名門が、僅か3得点に終わっていたことが解任の引き金となった。その後、暫定監督として松波正信強化アカデミー部長が兼任していた指揮官のポストは、松波氏が正式に引き継ぐこととなった。
松波監督体制に移行後、チームはリーグ戦8試合、天皇杯1試合、ACL6試合の計15試合を消化。ACLと天皇杯は対戦相手の国やカテゴリーによってレベルが違い過ぎるために比較対象から除くが、リーグ戦では3勝1分4敗の勝点10。6得点8失点という結果が残っている。そろそろ再検証が必要である。
宮本前監督体制時からの気になるデータ
上記はG大阪のJ1リーグで記録された主要スタッツ。宮本前監督体制下と松波現監督体制下で分けてまとめたが、クリアの数が増えてパス本数も約50本少なくなっているため、ボール支配率に4%の違いが出た。昨季に続いて今季もJ1の首位を独走する川崎フロンターレはボール支配率が高いイメージがあるが、今季は22試合を消化した現在、その数値は54.6%である。宮本体制時には51.9%あったものが、松波現体制で47.8%に下がったのは、やはり大きな変化と見るべきだろう。ただ、これは採用しているシステムとも関係がある。
本職のサイドバックが軒並み負傷離脱し、3センターバックのシステムを採用することが多くなったことは、適材適所な人選と戦略である。機能不全のシステムや戦術、配置を頑なに継続してJ2へ降格するに至った2012シーズンの松波監督とは違い、今回は柔軟な采配で粘り強く勝点を稼いでいると言って差し支えない。
しかし、課題は山積みである。まずは18試合を消化した時点で未だリーグワーストの9得点に止まっている得点力の低さである。しかも、その9得点全てをFW(パトリック4、宇佐美貴史2、レアンドロ・ペレイラ2、一美和成1)しか記録していないのである。
そして最も気になるデータが、上記したゴール期待値(得点期待値)である。ゴール期待値とは「あるシュートチャンスが得点に結びつく確率を0~1の範囲で表した指標の合計」で、その1試合の平均値を示したのが上記の数値となる。直近3シーズン分を掲載したが、失点の可能性を示す「被得点期待値」の値が軒並み高く、ほぼ同じ数値を記録している。
日本代表経験も豊富な守護神GK東口順昭が不調だった2019シーズンは、被得点期待値とさほど大差ない失点も喫していたが、J1で2位に躍進した昨季や降格圏内に低迷している今季は被得点期待値と失点の差がかなり大きい。つまり、昨季の躍進の大部分は東口の復調で掴み取ったもので、今季の低迷も守護神の奮闘により傷口が大きく拡がることを防いでいる状態だと言える。
またG大阪では例年、攻撃面で得点期待値と実際の得点の差が小さかった。決定力不足が叫ばれる日本において珍しい現象が続いていたが、今季に限っては当たりが止まっている。いや、そもそも「0.93」と、1試合平均で1得点を期待できない攻撃しか構築できていないことの方が深刻だ。
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