Jリーグ ヴィッセル神戸

ヴィッセル神戸のベルギー代表DFフェルマーレンがJリーグにいる幸せ

ACL2020準決勝、蔚山現代と戦うヴィッセル神戸トーマス・フェルマーレン 写真提供:Gettyimages

センターバックの新たな魅力を教えてくれる選手

そして、フェルマーレンと言えば左足のキックである。当時は中盤までドリブルで運んだり、司令塔のセスク・ファブレガスとのワンツーで持ち上がってミドルシュートを放つ場面も多かった。その際に披露するのも強烈なインステップキックによる弾丸シュートだけでなく、カーブをかけたスピードもあるコントロールショットも蹴り分けていた。また、彼が左CBの位置からほぼノーステップでFWの足下に差し込む球筋の速いグラウンダーの縦パスや右ウイングの足下にピタリとつける矢のような左足でのロングフィードには何度も惚れ惚れしたものだ。

もともと技術が高く、複数のポジションをこなせるポリバレントで現代的な選手を育成するアヤックス出身の選手なだけにドリブルも巧みであり、そのコース取りが絶妙だった。左サイドバックのガエル・クリシーが駆け上がったスペースをなぞるように進むために、全く相手に奪われない。ドリブルに頭脳明晰ぶりを感じさせる選手なんているのか?と。つまり、攻守に渡って戦術眼に長けているのだ。

オランダ代表のフィルジル・ファン・ダイク(リバプール)を筆頭に、現代のCBには高さ、強さ、速さはもちろん、攻守に万能であることが一般的になった。それだけに移籍市場でCBの選手につく移籍金の高さには納得であるが、12年前はその兆しこそあれ、まだまだ補足要素に過ぎなかった。

ちなみにベルギー代表の後輩であるヤン・フェルトンゲン(ベンフィカ/ポルトガル)やトビー・アルデルワイレルト(トッテナム・ホットスパー/イングランド)もアヤックス出身のベルギー人である。2歳ずつ違う3人は共にKベールスホットAC(現在は解散)というアヤックスと提携関係にあったクラブ出身で、ベルギーの育成改革を始めるための最初の一歩に繋がっている。

フェルマーレンはその後、アーセナル2年目で約1年に及ぶ長期離脱を経験して以降、負傷離脱を繰り返すようになった。しかし、そのプレーぶりはバルセロナにも評価され、ここに来て神戸でコンディションを取り戻した感がある。

12年前、筆者を含めアーセナルファンは彼を通してCBというポジションの新たな役割や魅力を勉強させてもらった。フェルマーレンがヴィッセル神戸で、JリーグでプレーすることでDFの新たな魅力をどんどん発信してくれている。

日本時間7月3日、ユーロ準々決勝でベルギーはイタリアに敗れたが、フェルマーレンがJリーグを愛してくれているように、我々も彼を愛している。

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