今シーズンのJリーグにおいて、今注目度が高いクラブは京都サンガF.C.ではないかとにわかに思っている。新スタジアム、新戦力など何かと新陳代謝が激しかったサンガは今シーズンこそ11年ぶりとなるJ1復帰を目指しているが、それはもしかすると本当に実現するのではないかと私は密かに確信している。
J2が開幕してからたった3試合消化時点で大風呂敷を広げるのはあまり良くないとは思いながらも、今シーズンのサンガについて昨シーズンと比較しながら綴っていきたい。
①昨シーズンよりも厚みの増した攻撃陣
昨シーズンのサンガと言えば、仙頭啓矢(現所属:横浜Fマリノス)、小屋松知哉(現所属:サガン鳥栖)、そして一美和成(現所属:横浜FC)から構成される3トップの攻撃力が魅力の1つだった。しかし、今シーズンからそれぞれJ1クラブへの移籍を決断し、サンガの攻撃スタイルは白紙になってしまった。実に昨シーズンの総得点数の約60%を生み出した彼らの放出はクラブ全体の不安要素だったが、新戦力によって見事にカバーできるかもしれない。
今シーズンから加入した、ピーター・ウタカの1トップ、同じく新加入の曽根田穣と宮吉拓実の2シャドーで構成された新たな攻撃陣形は近い距離を保ちながら創造性に富んだプレーを展開できている。第2節のジュビロ磐田戦でピーター・ウタカが決めた2点目は宮吉拓実との落ち着いた連携から生み出された得点と言えるだろう。またサイドラインには飯田貴敬と荒木大吾が運動量を落とさず上下運動を繰り返し、押し込む展開5枚前線張るような状況に持ち込めている。
さらにJ1経験豊富な野田隆之介や李忠成も控えていることからも、選手層の厚さを感じずにはいられない。野田隆之介は3節の徳島ヴォルティス戦で途中出場から飯田貴敬のクロスに見事に頭で合わせ、難しい相手から先制点をもぎ取った。経験値の高いプレイヤーが後半途中から出場してくることほど怖いものはない。
②一新したディフェンスライン
昨シーズンのサンガの弱みは、ディフェンスラインの統率性であると考える。先制するものの途中で追いつかれて勝ち点を落とすケースがリーグ後半に散見された。もしチームを鼓舞できるプレイヤーの下でより組織的な守備を継続できていれば順位を落とすことなく柏レイソルを追従できていたのかもしれない。思い返したくない1試合13失点も起こらなかったはずだ。
もちろんここにもサンガはメスを入れた。今シーズンからは、安藤淳、ヨルディ・バイス、森脇良太の3バックでディフェンスラインが構成され、統率の取れた安定感ある戦いができている。高さのあるルディ・バイスや果敢にパスカットにができる森脇良太の獲得が功を奏したか、J2再開初戦のジュビロ磐田戦ではクリーンシートを達成させた。こうした守備陣の踏ん張りはJ1復帰のきっかけになるはずだ。
③熟練されているかのような連携力と団結力
積極的な補強をすればするほど、連携力の低下はリスクとして浮上する。過去に新戦力の多さによって組織的なプレーをできなくなった結果弱体化した例も存在する。
今シーズンのサンガもまさしくその例に当てはまる可能性が十分にあったが、どうやらその心配はなさそうだ。むしろ連携力は良いようにも感じられてしまう。実際のところプレシーズンマッチのセレッソ大阪戦では守備連携は決して良いとは言えず、サイドにいる選手へのチェックが疎かになった結果セレッソ大阪の攻撃を防ぎきれなかった。しかし、再開後のプレーを見るにチームとしての組織力は格段に向上している。ジュビロ磐田戦では前半は相手の動きに翻弄される時間もあったが、徐々にポジショニング調整しながら強力な攻撃陣に対応した。
もちろん守備だけでなく、攻撃面においても金久保順と庄司悦大が中盤でバランスを取りながらボールをコントロールし、ピーター・ウタカに縦パスを入れたり、サイドへボールを散らすなど彼ら中心に連携を図っている。新型コロナウイルスによってリーグ戦が一時中断に追い込まれてしまったが、この中断期間を活用しチーム力向上の準備期間に充てたことが幸いだったのかもしれない。
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