ケインがシアラーを超えるには
ブラックバーンから移籍した後の2年間もプレミアリーグの得点王を獲得し、PFA年間最優秀選手賞を2年連続で受賞した。その卓越したヘディングの強さとどんなレンジからもシュートを決められる技術を持った姿を、現在のケインと重ねるイングランド人は多いはずだ。それゆえに、スリーライオンズでの活躍に不安を持つ人も少なくないだろう。
当時のシアラーは、間違いなくイングランドで最高のストライカーであり、引退したゲーリー・リネカーの後継者として大きな期待を寄せられていた。1996年の自国開催となったEUROでこそ得点王に輝いたものの、それ以降は怪我に悩まされてイングランド代表では63試合に出場し30得点を記録するにとどまった。
「10人の勇敢なライオンと1人の愚か者」と言う有名な言葉が生まれた1998年フランスワールドカップには、イングランド代表のキャプテンとして出場。デイビッド・ベッカムがディエゴ・シメオネの挑発に乗って“脚を出した”場面で、主審に駆け寄ってベッカムを擁護していたのはシアラーだった。この試合に敗れたイングランド代表は失意の中で大会を去り、シアラーにとっても最後のW杯となった。
イングランド史上最も完成されたストライカーのひとりだったシアラーは、2000年に惜しまれながら代表を引退。ニューカッスルではその後も得点を獲りつづけ、現役から引退する時には、プレミアリーグでの通算得点数は260点になっていた。これはもちろんプレミアリーグ記録であり、未だ誰にも破られていない。
ケインはイングランド史上最も偉大なストライカーになれるのか?という問いはつまり、ケインはシアラーを越えられるのか?と言い換えることができるだろう。そしてケインがシアラーを越える時、それはイングランドがW杯で優勝を果たす時だと言っていい。愛するクラブと母国に忠誠を誓ったシアラーは、誰よりもその瞬間を楽しみにしているはずだ。
著者:土屋一平
フットボールトライブ編集長。通称「ペペ」。ベティスをこよなく愛す(ベティコ)。
Twitter:@PPDOLPHINS
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