Jリーグ

神戸の適応力の高さに屈した湘南。今後突き詰めるべきは【J1試合分析】

茨田陽生(左)大迫勇也(右)写真:Getty Images

明治安田生命J1リーグの第27節(延期分)が10月12日に行われ、ヴィッセル神戸と湘南ベルマーレが対戦。後半21分に、神戸のMF汰木康也が蹴ったコーナーキックにFW大迫勇也が右足で合わせ、先制ゴールをゲット。その後も守備面で集中を切らさなかった神戸が1-0で湘南を下している。

破竹の5連勝でJ1リーグ残留に大きく前進した神戸。いかにして湘南の攻撃を受け止め、勝ち点3をもぎ取ったのか。まずはこの点について言及する。


J1第27節、神戸vs湘南のスターティングメンバー

的確だった守備隊形の使い分け

神戸の基本布陣は[4-1-2-3]。インサイドハーフの小林祐希が湘南のアンカー茨田陽生を捕捉し、武藤嘉紀と汰木の両ウイングFWが、相手の左右のセンターバック杉岡大暉と舘幸希に睨みを利かせる。特に武藤の出足は鋭く、湘南の左ウイングバック中野嘉大へのパスコースを塞ぎながら杉岡にアプローチしていた。

決勝ゴールはコーナーキックから生まれたが、神戸の最大の勝因は、守備隊形を的確に使い分けたことに尽きる。

湘南がセンターサークル近辺でボールを保持した際は、[4-4-1-1]([4-4-2])の守備隊形に移行。このときも小林祐希が茨田をマークしたほか、4バックでは埋めにくいセンターバックとサイドバックの間やハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)を、大﨑玲央と山口蛍が降りてカバーリング。ハイプレスのみならず、自陣への撤退守備の段取りも整備されていた。

神戸の自陣撤退守備

直近のリーグ戦でも逃げ切り策として用いた[3-4-2-1]([5-4-1])の布陣も、湘南相手に威力を発揮。後半アディショナルタイムにFW大橋祐紀にヘディングシュートを放たれたものの、この場面以外は湘南陣営のクロスを危なげなく跳ね返している。湘南にボールを保持される時間帯もあったなか、神戸が堅実な試合運びを見せた。


ヴィッセル神戸 FW大迫勇也 写真:Getty Images

今や神戸はオールマイティ型のチームに

今の神戸の強みは、一つひとつの試合における適応力の高さだろう。

この試合のスターティングメンバーに着目しても、しなやかなボールキープが持ち味の大迫と汰木に、フィジカルコンタクトや空中戦に長ける大﨑と菊池流帆。無尽蔵のスタミナを活かし、敵陣と自陣を行き来できる武藤、山口、酒井高徳など、選手の特長が様々。故に試合の性質に応じて、ボールポゼッション重視型と堅守速攻型のどちらにも振る舞える。

今回の湘南戦のように、ハイプレスと自陣撤退守備を臨機応変に使い分けることも可能。多様な個性を活かし、その時々で必要な戦い方を選べるオールマイティなチームは、対戦相手からすると捉えどころが無く、これが戦いにくさに繋がっているのかもしれない。あらゆる状況に対応可能なメンバー編成や布陣選択を行った、吉田孝行監督の手腕の賜物とも言えるだろう。

Previous
ページ 1 / 2

名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

筆者記事一覧