この10年、イタリアでどのクラブが最もレベルアップしたかと質問されたら、私は間違いなくアタランタと答える。数年前まであまり目立たなかったこのチームは、いつの間にかセリエAランキング上位の「常連さん」となった。
この素晴らしい成長の理由はしっかりしたユースのシステムにある。イタリアでアタランタのユースは一流と言われ、イニエスタやメッシなど、バルサのゴールデン・ジェネレーション(黄金世代)を生み出したバルサ・ユースとよく比べられている。
しかし、ある男がいなければ、アタランタはここまで強くならなかっただろう。若手戦力をうまく仕切って、正しく導いている男。それはキャプテンのアレハンドロ・ゴメスです。
ゴメスはこのチームのユースで育った選手ではないにも関わらず、誰よりもリスペクトされている。精神的な強さと良いパフォーマンスの継続でチームに欠かせない存在となった。30歳を過ぎている「パプ」(ゴメスはこう呼ばれている)は、いまだに体力的にも戦術的にも成長し続けている。
ゴメスに与えられた最初の役割
2016年ジャン・ピエロ・ガスペリーニがアタランタの監督になってから、ゴメスはチームの攻撃の中心となった。ヨシップ・イリチッチがまだアタランタの選手となる前、パプの役割はこのチームの技術のレベルを上げることだった。
ユースから出た選手たちの一番の武器はとにかくスタミナとスピードであって、その特徴を活かすためにゴメスはテンポの速い攻撃を作り出し始めた。
彼は昔から、前を向いて状況を見てから判断するタイプの選手だった。そして、クイック展開というパターンもマスターしたことで、頭の回転がもっと良くなったとゴメス自身が言っている。
そのシーズン、ゴメスは10得点10アシストという素晴らしい結果を残した。そして、周りにはそれがキャリアのピークになるのではないかと勝手に判断されていた。しかし、ゴメスの進化はまだ続くのだ…。
レベルアップに向けた更なる役割
2016/2017シーズンのアタランタの目標は上位に入り込むことだったが、その次のシーズンからガスペリーニ監督はそれを継続させなければならなかった。そのためには守備を固めてカウンター狙いという作戦はリスキーすぎて、ビッグクラブらしくゲームを支配して戦う戦略を生み出す必要があった。
アタランタはフィオレンティーナに所属していたイリチッチを獲得し、彼を攻撃の要とした。ゴメスはもう少し低いところで「全体を見る」役目を任された。
ポジション的にはいつもと同じ左サイドだったゴメスだが、ボールを持ってない時の動きが変わった。前はサイドでロングパスを受けて速い攻撃を仕掛けるのが役割だったなら、2017/2018シーズンはディフェンスラインまで下がってボール運びの協力をするパターンが多くなった。そして、守備からボールを受け取ったあと、前を向いてピッチ全体の動きを見極めた上で、ベストの進み方になるパスを出すのが役割になった。
予測しにくい起用法に
アタランタに来てから複数の役割が与えられたことで、ゴメスは予測しにくい選手となった。そして、カンスペリーニ監督が相手によって違う使い方することで、彼に苦手意識を持っているチームが非常に増えている。
サイドに開いて、仕掛ける…。ディフェンスラインまで下がってボールを受ける…。チームメイトとのコンビネーションに挑戦する…。もう31歳になるゴメスだが、以前の彼にはなかったスタミナで誰よりも走り、ピッチのどんなところにも顔を出している。
彼のサッカーが国内だけではなく国際的にも通用することは、11月27日(日本時間)に行われたチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージ第5戦のディナモ・ザグレブ戦に現れた。その試合ではゴメスの活躍が誰よりも目立っていた。
2020年のアタランタの活躍に期待
来年イタリア人が一番楽しみにしているのは、CLのグループステージを突破したアタランタの活躍です。2月20日と3月11日(日本時間)のバレンシア戦を勝ち進み、昨シーズンにベスト4進出を果たしたアヤックスのような素晴らしいパフォーマンスを続けるだろうか?それともすぐ負けてしまうのか?
いずれにしても、今年アタランタはすでにCLの歴史に名を刻んだ。グループリーグ開幕3連敗から決勝トーナメントに進出できたチームは欧州CL史上初です。
数年前までアタランタがヨーロッパのこんなに高いレベルで戦えるようになるとは誰も想像つかなかっただろう…。そして、ビッグクラブに所属したことがないゴメスがこのクラブを強くした男ということは認めなければなりません。
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