Jリーグ

J1低迷5クラブ監督解任の可能性を検証。横浜FMに続くのはどこか

長谷川健太監督 写真:Getty Images

名古屋グランパス:長谷川健太監督

名古屋グランパスは2025シーズン開幕から苦しいスタートを切っており、長谷川健太監督のもとで2分け4敗という成績で、一時は最下位に沈んだ。現在は多少持ち直し14位まで順位を上げたが、降格圏との勝ち点差は「4」で予断は許さない。開幕6戦未勝利というクラブ史上最悪のスタートにより、サポーターからは監督交代の声が集中している。

長谷川監督は2022年に就任し、昨2024シーズンのルヴァン杯を制覇した。J1通算601試合と経験も豊富だ。名古屋にとっては日本人監督による初タイトルによって続投した格好となったが、リーグ戦11位という結果に、サポーターからは懐疑的な声も上がっていた。

現在6試合負けなしと堅実なゲームが続くが、長谷川監督の采配に対する疑問は多い。ルヴァン杯でもJ2カターレ富山に敗れたことで、サポーターからの解任論はやんでいない。山口素弘GMは「今のところ考えていない」と語ったが、この状況が続けば監督交代は避けられないだろう。長谷川監督の解任を見越して、複数のJ2クラブが水面下で招聘を狙っているとまで言われている。

何しろ名古屋はJリーグきってのビッグクラブだ。後任候補としては、Jリーグでの経験が豊富な監督か、アッと驚くような外国人監督の招聘に動く可能性もある。


樹森大介監督 写真:Getty Images

アルビレックス新潟:樹森大介監督

J1での監督は初挑戦の47歳、樹森大介監督。アルビレックス新潟で松橋力蔵前監督(現FC東京)が築いたパスサッカーを継承しつつ成長させる期待を背負ったが、J1第19節終了時点(18試合)で3勝7分け8敗、勝ち点16で19位と降格圏に沈んでおり、解任に“リーチ”が掛かった状態だ。

サポーターからは「自ら身を引くべき」といった声が上がり、戦術やチームマネジメントに対する批判が強まっている。さらには「J1どころかプロクラブ未経験監督のキャリア作りのための踏み台にされたくない」といった声や「クラブ史上最低の監督」のレッテルも貼られる始末。サポーターの批判と圧力は、クラブ運営にも悪影響を与える可能性がある。

就任会見では、新潟のポゼッション重視のスタイルを継承する方針を示しつつ「攻守の切り替えの遅さ」や「ゴール前での精度不足」を改善ポイントとして挙げていた樹森監督。しかしこれらの課題が解消されている様子はなく、戦術的な限界が解任を求められている要因となっている。

J2水戸ホーリーホックのコーチやユース監督としての実績しかなかった樹森監督の選任は、寺川能人強化部長を中心とした戦略的な決断だった。就任当初はサポーターもクラブの長期的なビジョンを支持していたが、ここまで負けが込むと「長期的なスタイルの確立」などとは言っていられないことは明らかだろう。

しかし、後任探しは困難を極めるだろう。夏の移籍市場中での監督交代は、補強戦略にも影響を与えるため、メリットよりもデメリットが大きい側面もある。また、「経験の浅い樹森監督で闘うと決めた時点で覚悟が必要」と、監督を支えるべきとの声も存在する。このような支持層の存在によって、クラブが即座に解任に踏み切るのを抑える可能性がある。

2025年6月のスポーツ紙のインタビューで樹森監督は「疑心暗鬼」「眠りが浅い」と苦悩を明かしつつも、「新潟のスタイルを見つめ直す」と前向きな姿勢を示した。辞任の意思がなく、クラブも監督の続投を後押ししている証拠だろう。現時点で即解任に至る可能性は低いと考えられるが、夏場の戦績や補強の成否が状況を大きく左右すると思われる。


監督解任は、停滞したチームに変化をもたらす最も手っ取り早い手段であり、「劇薬」にも例えられる。監督交代直後にチームの成績が一時的に向上する「ニューマンスバウンス(新監督効果)」は、サッカー界で広く知られた現象だ。

しかし、その効果は必ずしも長続きしない。選手のクオリティーやフロントのビジョン欠如など根本的な問題が解決されない限り、監督を代えてもいずれ同じ壁にぶつかることになる。むしろ、頻繁な監督交代は、クラブのサッカースタイルや哲学の構築を妨げ、長期的な低迷を招く「負のスパイラル」に陥る危険性さえある。

監督のクビは時として非情に飛ばされる。そしてサポーターは、期待と不安、そして少しの残酷な好奇心を持って見守ることしかできない。果たして次に監督の座を追われるのは、どのクラブの、どの指揮官なのだろうか。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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