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欧州で広がるセットプレー専門コーチ。Jでもスタンダードに?

黒田剛監督(左)オースティン・マクフィー氏(右)写真:Getty Images

UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝で、プレミアリーグのアストン・ビラは、パリ・サンジェルマン(PSG/リーグ・アン)を相手に2戦合計4-5で敗れるも、4月16日の第2戦は終始オープンな展開でカウンターの応酬となり3-2で勝利した。

ビラをCL8強に導き、リーグ第33節終了時点で欧州カップ戦出演圏内の6位に押し上げている強さに秘密の1つに、セットプレーでの得点の多さが挙げられている。2021シーズンからビラでセットプレー専門コーチを務めているのは、スコットランド人のオースティン・マクフィー氏だ。

現役時代は、ルーマニア3部のダチア・ウニレア・ブライラ(2002-2003)、そして当時JFLで現在東海1部のFC刈谷(2003–2006)でプレーし、そこでスパイクを脱いだ(27歳で引退)マクフィー氏は、アマチュアチームや下部リーグのクラブで指導者経験を積み、北アイルランド代表アシスタントコーチ(2014-2021)、スコットランド代表アシスタントコーチ(2021-2024)、ポルトガル代表アシスタントコーチ(2025-)を務める傍ら、デンマーク・スーペルリーガのミッティラン(2020-2021)で、セットプレー専門コーチとして招かれ指導力が開花した。

ここでは、欧州で広がるセットプレー専門コーチについてまとめ、Jリーグにおける状況と比較考察してみよう。


プレミアリーグ
プレミアリーグ 写真:Getty Images

欧州全ゴールの約30%がセットプレーから

欧州サッカー界においては、全ゴールの約30%がセットプレーから生まれていると言われており、その重要性は年々高まっている。プレミアリーグでは、全20クラブのうち13クラブがセットプレー専門コーチを置いている。

以下は、プレミアリーグ2024/25シーズン第33節終了時点の、セットプレーからの得点10傑だ。これらのクラブの全てがセットプレー専門コーチを雇用している。

プレミアリーグ、セットプレーからの得点(2024/25第33節終了時点)

  1. アストン・ビラ:14点(全53得点)
  2. クリスタル・パレス:14点(全41得点)
  3. ノッティンガム・フォレスト:12点(全51得点)
  4. アーセナル:11点(全57得点)
  5. チェルシー:11点(全56得点)
  6. マンチェスター・ユナイテッド:10点(全38得点)
  7. ブレントフォード:10点(全52得点)
  8. エバートン:10点(全34得点)
  9. ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオン:10点(全51得点)
  10. トッテナム・ホットスパー:9点(全60得点)

プレミアリーグに限らず、欧州全体に目を移しても既に多くのクラブで導入されているセットプレー専門コーチは、戦術の細分化と専門性の向上により、試合の勝敗にも直結するセットプレーの精度を高める役割を担っている。

上記のプレミアリーグのクラブでも、セットプレー専門コーチが攻撃・守備のスキームを設計し、選手の配置や動きを緻密に指導。データを活用し、相手の弱点を突く戦略を立てることで、得点力や守備の安定性を向上させている。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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