Jリーグ

事実上の“Jリーグ追放”?Y.S.C.C.横浜の役目は終わったのか

ニッパツ三ツ沢球技場 写真:Getty Images

Jの舞台に戻る意思とメリットは

問題はここからだ。果たして再び戦いの場をJFLに移すこととなったYS横浜は、再度、Jリーグ復帰を目指すのだろうか。そうであればJFLで2位以上の成績を収めた上で、再度クラブライセンスを取得するため「観衆平均2,000人」と「ホームスタジアムの3分の1以上に屋根の設置」といった問題をクリアしなければならない。

ニッパツ三ツ沢球技場に屋根はほとんどないに等しいものの、J創設からホームスタジアムとして使用されている実績(1993-横浜マリノス、1993-1998横浜フリューゲルス、1999-横浜FC、2014-Y.S.C.C.横浜)から、ここで蹴られることはないだろう。

しかし、観衆平均2,000人というハードルを越えるのは至難の業だ。現にここ3年、YS横浜の観衆平均は約1,100人前後で推移しており、スクール生を総動員したとしても不可能に近いと思えるからだ。

そもそも吉野氏をトップとするフロントが再びJの舞台に戻る意思があり、そこにメリットを感じているのかどうか。「地域密着」と「社会貢献」がクラブの存在意義だとすれば、既にその目的は十分に達成している。吉野氏の理想を引き続き追求するとしても、JFLでも可能である上、フットサルチームは日本最高峰のFリーグ1部に属している。無理に背伸びしてJ再参入を目指す必要性を感じないのである。


田場ディエゴ 写真:Getty Images

姿勢が問われる2025シーズン

2014年から10年間、YS横浜がJ3に居続けてくれたお陰で、J3クラブのある地方出身者は上京したとしても年に1度は応援に行くことができた。しかし降格によって、J3クラブが首都圏から消えてしまった。YS横浜戦のアウェイ側席はさしずめ“即席県人会”の様相を呈していたものだ。その点でYS横浜の降格を残念に思っているJ3ファンは少なくないだろう。

しかし降格決定早々、2024シーズン出場ゼロのMF田場ディエゴが、X上で倉貫一毅監督の采配や練習メニュー、フロントのチームマネジメントを批判した上で、チームの内情や契約内容も暴露している(現在は削除)。田場の主張の真実性への疑義や、試合に絡めなかった腹いせの可能性があるものの、成績以前にチーム内は崩壊状態にあったことが透けて見える。

JFL降格によって、来2025シーズンはゼロどころかマイナスからのスタートを余儀なくされるYS横浜。ただでさえ「横浜に3クラブは多過ぎる」と言われる中で再びJを目指すのか、JFLに身を置いて地域密着型クラブとして再出発を図るのか、いずれの道を選ぶにしても簡単ではないが、「Y.S.C.C.横浜」としてのクラブの姿勢が問われるシーズンとなりそうだ。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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