
警戒していたヤマルに破られると、攻撃に転じる
イングランドの戦略は後半に入ると、ほころびはじめる。47分にスペインは、右サイドでボールを受けたヤマルがカットインし、ニコ・ウィリアムズ(アスレティック・ビルバオ)の先制点をアシストした。やはり、警戒していたヤマルに破られてしまった。
イングランドは追い上げをはかるが、逆にスペインの術中にハマっていく感があった。そこでサウスゲート監督は61分にワントップのケインに代えてオリー・ワトキンス(アストン・ビラ)を投入。そして70分には、メイヌーに代えてコール・パーマー(チェルシー)を投入。すると3分後の73分にベリンガムのパスからパーマーが同点弾を決める。
見事なまでのベンチワークだが、そこにもサウスゲート監督の緻密な計算があった。システムは【4-4-1-1】で同じながらポジションの変更を行ったのだ。ベリンガムをセントラルMFにして、フォーデンを左MFにすると、パーマーをトップ下に入れた。投入したばかりのエネルギーのある選手を前線に近いところに置き、よりゴールに直結するプレーにからませることを意図したのだ。

微妙な駆け引きも最後は力負け
イングランドは同点弾の勢いのまま畳み掛けずに、やや自陣に引いて振り出しに戻したことでよしとする感があった。それだけ、スペインの攻撃は脅威的だったのと、延長戦まで視野に入れていたこともあるだろう。
試合終盤は、どちらかが1点を奪えば、それが決勝弾になりそうな状況。最後は両チームが得点を狙いに行ったが、打ち合ったらスペインが一枚も二枚も上手だった。86分に流れるようなスペインの攻撃から、こちらも途中出場のFWミケル・オヤルサバル(レアル・ソシエダ)が追加点を挙げる。
サウスゲート監督は89分にMFフォーデンに代えてFWイバン・トニー(ブレントフォード)を投入し攻撃の圧力を高めるも、挽回する時間はもうほとんど残されていなかった。
試合終了時には、ボールポゼッションがスペインの63%に対してイングランドが37%、攻撃回数は60回に対して31回、シュート数は14本に対して9本と差がついた。自分たちのプレーをすれば勝てると踏んだスペインに対して、リアクションサッカーに活路を見出そうとしたイングランド。両者の戦略が実力差を物語っていた。

欧州制覇は母国イングランドの至上命題
表彰式では、英国王室ウィリアム皇太子がイングランド・イレブンの労をねぎらった。サウスゲート監督は涙をぐっとこらえ、最後まで英国紳士を貫いた。勝利の女神は微笑まなかったが、敗れたイングランドは、チームが一丸となりこれ以上ないパフォーマンスを発揮した。
欧州選手権で2大会連続の準優勝は立派な成績だ。それで納得できないのは、イングランドがフットボールの母国であるがためだろう。また4年後に、悲願の初優勝を目指すことになる。
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