ダービーマッチ。それは同地域に本拠地を持ち、様々な因縁を背負うチーム同士が戦う試合である。双方のサポーターにとっても他の試合とは一線を画す。内容云々より「勝利のみ」が求められると言っても過言ではない。因縁があればあるほど真の盛り上がりに繋がるとも言えよう。
そういった意味で、アビスパ福岡とサガン鳥栖による「九州ダービー」は全国的に見ても白熱する試合の1つである。8月6日に鳥栖のホームである駅前不動産スタジアムで、2023シーズン2度目の九州ダービー(J1第22節)が行われた。前回のダービーマッチ(5月14日J1第13節)は0-0で引き分けている。
両者のこの試合に懸ける思いは極めて強い。薄暗くなり始めた19時、プライドがぶつかり合う死闘の幕が上がった。ここでは、九州ダービーにまつわる因縁の歴史と、4試合ぶりに決着のついた試合内容を振り返ってみたい。
福岡と鳥栖、因縁の歴史
県は異なるものの、本拠地は電車でわずか30分程度しか離れていない福岡と鳥栖の因縁は、それぞれ福岡ブルックス(1995)、鳥栖フューチャーズ(1987-1997)という名称だった頃から30年弱にわたって続いている。
因縁を決定的なものにしたのは、1994年のオフシーズンに、鳥栖のアルゼンチン選手ウーゴ・マラドーナ(ディエゴ・マラドーナの弟)を含む主力選手5名が一挙に福岡へ移籍したことだった。
近年では2021年2月、鳥栖との契約更新済みだったMF金森健志が古巣である福岡へと完全移籍で復帰。さらに今年、ダービーを控えた7月17日に鳥栖のDF田代雅也が福岡へ「禁断の移籍」を行ったことも因縁対決に拍車をかけ、8月6日の試合は一層両チームにとって負けられない一戦となっていた。
これぞダービー!両者譲らぬ展開
J1第21節終了時点では、鳥栖が順位は1つ上であったが、両チームの積み上げた勝ち点はいずれも29。つまり8月6日第22節の九州ダービーは、勝敗によってリーグの順位も入れ替わる大事な一戦となった。
ホーム試合となった鳥栖は、前節(7月16日ヴィッセル神戸戦1-2)からのスタメン変更は1人のみ。累積警告で出場停止処分となっていたMF堀米勇輝がMF森谷賢太郎と入れ替わる形でスタメンに復帰し、ベストと思われる布陣でアウェイチーム福岡を迎え撃つ。
一方、アウェイの福岡はDF前嶋洋太が出場停止により欠場。それ以外は主力選手が揃い踏みとなったものの、8月2日の天皇杯(JFA全日本サッカー選手権大会)で120分間フル出場したDFドウグラス・グローリとMF井手口陽介は中3日での出場となり、フィジカルコンディションは100%でないことが懸念された。
そんなチーム状況で迎えた九州ダービー。主導権を握ったのは、ボールポゼッションに秀で、両サイドハーフのMF長沼洋一とMF岩崎悠人の突破に強みを持つ鳥栖だ。福岡も負けじと強固な守備ブロックを敷き、FW山岸祐也のポストプレーやFWルキアンの背後への飛び出しを中心にカウンターを繰り出していく。
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