2022/23シーズンのセリエA第21節が2月6日(日本時間)に行われ、インテルとミランが対戦した。
第17節ローマ戦から20節サッスオーロ戦までの公式戦6試合で2分け4敗と、不振に陥ったミラン。第19節ラツィオ戦とサッスオーロ戦で計9失点と、崩壊してしまった守備を今回のミラノダービーでも立て直せず。前半34分にインテルのFWラウタロ・マルティネスにコーナーキックからゴールを奪われ、最終スコア0-1で敗れた。
ここではミランのステファノ・ピオリ監督が採用した戦法を解説するとともに、インテルの攻撃を止めきれなかった原因についても言及する。
ミランの[3-1-4-2]は機能せず
今節のダービーマッチで、ピオリ監督はかねてより採用してきた[4-2-3-1]の布陣ではなく、[3-1-4-2]を選択。インテルの3バックへのプレッシングよりも、自陣後方で守備ブロックを敷くことに注力した。
基本布陣[3-1-4-2]のインテルの中盤の底ハカン・チャルハノールの監視をFWディボック・オリギに、ニコロ・バレッラとヘンリク・ムヒタリアンの捕捉をサンドロ・トナーリとジュニオール・メシアスの2インサイドハーフに任せたものの、ここで問題が発生。トナーリとメシアスが自身の前後に立っているバレッラとムヒタリアンのマークに気を取られたことで、インテルの左右のセンターバック(ミラン・シュクリニアルとアレッサンドロ・バストーニ)による配球やボール運搬を簡単に許してしまった。
トナーリがシュクリニアルにプレスをかける構えを見せた際には、バレッラがシュクリニアルとマッテオ・ダルミアン(右ウイングバック)の間へ降り、ビルドアップを手助け。前半4分すぎにバレッラが早速ここへ降りてシュクリニアルからの縦パスを捌くと、このプレーがインテルの遅攻に繋がり、左ウイングバックのフェデリコ・ディマルコやマルティネスが立て続けに惜しいシュートを放っている。その後もシュクリニアル、バストーニ、バレッラを起点とするビルドアップでロッソネリ(赤と黒)を自陣に釘付けにしたネッラズーリ(黒と青)が、試合の主導権を握った。
今節のミランの敗因は、インテルの左右のセンターバックに誰がいつアプローチするのかが曖昧だったことに尽きるだろう。これによりボールの奪いどころを定めきれなくなり、やむを得ず[5-3-2]の布陣による自陣撤退守備で耐え忍んだが、この隊形の泣きどころである3セントラルMFの両脇のスペースをインテル陣営に突かれ続けた。
インテルの3バックに、ミランがオリビエ・ジルーとオリギの2トップ、もしくは前者のみを対峙させたため、この区域で数的不利が発生。これもインテルのビルドアップを止めきれなかった原因の一つと言えるだろう。
[3-4-2-1]を初期配置とし、1トップと2シャドーの計3人にインテルの3バックの捕捉を任せる。中盤の底チャルハノールらが最終ライン付近に降りた際はハイプレスを諦め、[5-4-1]に移行。自陣ペナルティエリア手前やサイドのレーンを満遍なく埋めるなどの戦術を採用していれば、もう少しインテルの選手たちの自由を奪えたかもしれない。ブラヒム・ディアス投入とともに後半から布陣を[3-4-1-2]に変え、これによりインテルのビルドアップを前半よりも妨害できていただけに、試合開始からこの守備隊形で臨まなかった点も悔やまれる。ピオリ監督の奇策が不発に終わったミランが、直近の公式戦7試合で2分け5敗と、泥沼にはまった。
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