アップダウンを経て愛され続ける理由
年々存在感を強めた青山は日本代表に選出されるようになり、2014年のFIFAワールドカップ(ブラジルW杯)にも出場した。サンフレッチェはリーグ優勝(2012、2013、2015)、個人としてもMVP獲得(2015)と、輝かしいキャリアを築いていく。
2018年にも3年ぶりの日本代表選出となった青山。だがここから難しい時間が増えていく。右膝の怪我で離脱し、2018年のロシアW杯の出場を逃したのだ。2019年のAFCアジアカップには出場したが、こちらも怪我の影響で大会途中で離脱となった。
Jリーグ史に残る素晴らしい選手だが、決して完璧な選手ではない。サンフレッチェは2017年にはJ2降格が目前に迫るほど低迷し、青山のパフォーマンスも上がらなかった。フィジカル面だけの問題ではなく、メンタル面にも問題を抱えていた。日本代表に選ばれるような選手であっても、サッカー選手である前に1人の人間だ。
それでも青山は試合から逃げることはなく、プロの選手としてはパフォーマンスが上がらなくとも1人の人間として立ち向かった。大きなアップダウンを経験しながら、常にサポーターへの対応が変わらなかった。サインを断らないことはもちろん、フランクに言葉を交わすファンサービスは丁寧で、数多くのサポーターを魅了してきた。
バンディエラとは長期間所属しているチームの象徴だが、ということは良い時期も悪い時期も存在する。糸を引くようなパス、怪我、J2降格、J1昇格、日本代表選出、W杯出場、苦しみながらも逃げない姿、素晴らしいファンサービス。そのすべてを、サポーターは体験してきた。青山もまた、それだけの期間サポーターの思いを背負ってきた。サッカーの美しさといえばプレーばかりが取り上げられるが、こうした関係性もまた美しさの1つだといえる。
独自の強みと精神力への期待
今2022シーズンのサンフレッチェは、開幕から5戦未勝利と出遅れた。けれど藤井智也や満田誠といった選手の台頭もあり、現在は中位まで順位を上げている。そのなかでボランチには運動量に長けた野津田岳人らが起用されることが増え、青山は1か月ほどリーグ戦の出場から遠ざかっている。
それでも現在のボランチ陣のなかで青山のゲームメイク力とパスの精度は図抜けており、キャプテンの力が必要になる場面はきっと訪れるだろう。年を重ねると、避けられない衰えというものが出てくる。けれど青山の持ち味は、それには当てはまりにくいものが多い。
ジュビロ磐田の遠藤保仁が40歳を越えてもなおそうであるように、試合を陰で操るサンフレッチェ広島のバンディエラをはまだまだ観られるに違いない。青山敏弘のキャリアを振り返ると、難しい状況から這い上がってきたことは1度や2度ではないのだから。
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