Jリーグ 鹿島アントラーズ

鹿島アントラーズの若武者、荒木遼太郎が持つ無限の可能性

相馬直樹監督 写真提供:Gettyimages

2年目に見せた真の凄さ

迎えた2年目となる2021シーズン、荒木の快進撃が始まる。開幕戦の清水エスパルス戦で途中出場からシーズン初ゴールを決めると、続く湘南ベルマーレ戦、サンフレッチェ広島戦と立て続けにゴール。これは27年ぶり2人目となる、城以来の10代での開幕3試合連続得点。鹿島での開幕3戦連発弾はマルキーニョス(2007-2010)以来、13年ぶり4人目の記録となった。

4月にアントニオ・カルロス・ザーゴ監督から相馬直樹監督へと監督交代を経て、中央での起用が増えると、荒木はさらに本領を発揮。アシストと得点をコンスタントに積み重ね、前述の11月3日の第34節のサンフレッチェ広島戦の得点で史上2人目となる10代での2桁得点を決めたのだ。

得点に絡む力が優れている選手であることは数字に現れているが、魅力はそこだけではない。というよりも、荒木ほど魅力が多い選手が他にどれだけいるだろうか。まずはボディバランスに優れていることと足からボールが離れないことが大きな特徴で、それを巧みに使うことでプレーの幅が非常に広い。ゴールを目指すためのドリブル、素早い反転と高いシュート意識。加えてボールを引き出す動きにも優れている。セットプレーのキッカーを務めるほどキックの精度も高い。

また、ここまでの急成長を促しているのは、切り替えの早さと現状に満足しない貪欲さだ。ロアッソ熊本のジュニアユースに入った直後も鹿島に入団した当初も苦しんだが、寝たら忘れる切り替えの早さでポジティブに課題に取り組んできた。プロ1年目の序盤戦は攻撃的な若手選手にありがちな、攻撃面の輝きと引き換えの守備面の緩さが多少見られたが、課題から目を離さずに守備の強度を改善。細かなミスが目立つなどまだ荒削りな部分はあるが、彼ならば今後も1つ1つ改善していくことだろう。

ピッチ内とピッチ外での違いも面白い。ピッチから離れると負けず嫌いな性格から一変。ピッチ外では誰からも「優しい」という声が聞こえてくるうえ、初のヒーローインタビューでは天然な面も。サポーターへのメッセージを求められた荒木は、カメラ越しでなくスタンドに直接伝えるのかと勘違いしていた。


鹿島アントラーズのホーム 県立カシマサッカースタジアム 写真提供:Gettyimages

秘める特大の可能性

プレーはもちろん、様々な面でサポーターを魅了する荒木の姿は、すでに鹿島に欠かせないものになっている。今季開幕前には「5ゴール5アシスト」を目標に掲げていた中で、3試合を残して10得点7アシスト。まずはこの数字をどこまで伸ばすのか注目が集まっている。

そしてその先には、日本代表が長年抱える「得点力」という課題を解消する可能性までも秘めている。最前線のFWが得点を奪うのではなく、トップ下に君臨する荒木をはじめとする2列目の選手達が得点を量産する。自分自身の予想をも遥かに超える成長曲線を描く荒木ならば、世界を相手にそんな姿を見せてくれる可能性を秘めている。

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名前椎葉 洋平
趣味:サッカー観戦、読書、音楽鑑賞
好きなチーム:アビスパ福岡、Jリーグ全般、日本のサッカークラブ全般

福岡の地から日本サッカー界を少しでも盛り上げられるよう、真摯に精一杯頑張ります。

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