Jリーグ アビスパ福岡

アビスパ福岡、悲願のJ1残留とその要因

志知孝明(現アビスパ福岡)写真提供:Gettyimages

J1残留を目指す、4度目の挑戦

J1のクラブとして迎えた2021シーズン。残留を目指す、4度目の挑戦である。ところが、戦力アップを図るべきオフシーズンの評価は冴えなかった。昨2020シーズンの飛躍を支えた期限付き移籍組が所属元へ帰還し、絶対的な守護神だったセランテス(CDテネリフェ、スペイン)も退団。

先を見据えた補強を行うべく、完全移籍での補強を中心に横浜FCから長谷部チルドレンの志知孝明、サガン鳥栖から金森健志らを獲得。外国籍選手は出場枠の5を超えるほどに増加したが、戦力は「微増」との見解が多かった。

実際にシーズン当初は苦しんだ。開幕戦で名古屋グランパスに1-2で敗戦。スコア以上の完敗を喫すると、その後の2試合も勝利なし。そんな潮目が変わったのは第4節の徳島ヴォルティス戦だ。昇格を争ったライバルに苦しみながらも2-1で勝利すると、鹿島アントラーズにも勝利し2連勝となった。

自分達のサッカーが通用することを身をもって理解できると、チームというものは途端に変わる。第10節のFC東京戦にブルーノ・メンデスのゴールで勝利したことを機に、そこからJ1でのクラブ記録となる6連勝を記録。5位まで順位を上げた。

さすがにその勢いは持続せず5連敗も経験したが、再び調子を上げここ7試合は4勝1分2敗。今季無敗だった川崎フロンターレに唯一土を着け、勝ち点を一気に積み上げ、残留を手繰り寄せた。

チームの根幹にあるのは粘り強い守備だ。ボールを握られることを受け入れ、ボールの位置に応じて細かくポジションの修正やスライドを繰り返す。適切な選手間の距離をいかして、相手の状況で前線から追う守備とブロックを作る守備を使い分ける。そして腹を空かせたライオンのように、複数で囲いボールを奪いきってしまう。

シーズン開幕当初はそこからシンプルに速攻を目指すばかりだったが、攻撃の質も幅も向上した。第28節、鹿島戦の先制ゴールのように、パスを繋いで崩すシーンは着実に増えている。


アビスパ福岡のアビーくん 写真提供:Gettyimages

歴史は変えた。行こう、その先へ

J1残留は達成した。とはいえ今季の目標はこれで終わりではない。長谷部監督は開幕前から言っていた。目標は「10位以上」と。現在8位。サポーターでさえ半信半疑だった目標は、現実味を帯びつつある。

ヴィッセル神戸戦を終え、残すは6試合となった。新たな歴史を作るため“長谷部アビスパ”は目の前の1試合1試合を大切に戦う。地道な積み上げこそが、J1定着、さらにその上を目指すことへ繋がると信じて。

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名前椎葉 洋平
趣味:サッカー観戦、読書、音楽鑑賞
好きなチーム:アビスパ福岡、Jリーグ全般、日本のサッカークラブ全般

福岡の地から日本サッカー界を少しでも盛り上げられるよう、真摯に精一杯頑張ります。

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