Jリーグ ガンバ大阪

松波体制後のガンバ大阪を再検証。MF倉田秋を“出木杉くん”にしてはいけない!

ガンバ大阪MF倉田秋 写真提供:Gettyimages

ガンバを誰よりも愛する倉田秋

筆者は以前下記のような「G大阪の再建計画」なる記事を執筆し、その1つとして「長年に渡るサイドバック軽視のチーム編成」を問題視していた。G大阪は、その後の7月25日にJ2水戸ホーリーホックから両サイドバックをこなせる柳澤亘の獲得を発表した。これで4バック型のシステムへとスムーズに移行し、現在よりも攻撃に割ける枚数も多少は増えるようになるだろう。

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しかし、得点期待値の大幅な低下と共に言及したいのが、「再建計画」でも挙げた元日本代表MF倉田秋の進撃が止まったことである。2017年からG大阪の10番を背負う倉田は、7月24日の鹿島戦でフル出場。実はこの試合は彼にとって今季J1リーグで初めてのフル出場だった。鹿島戦はG大阪にとって今季18試合目だった。

ボランチ起用が多くなった倉田は、球際での競り合い強化のために筋力増量を図ったことが裏目に出ている。決して運動量が減っているわけではないが、小回りが利かずに従来の縦横無尽ぶりが消えているのである。また、現在の倉田は若手が多く起用される傾向のある左サイドやボランチの相棒の攻撃をサポートし、守備面をカバーしている。そのうえでゴール前の崩しや得点を自分に課している。それら全てに気になることがあるからこそ、多くの場面で関与する動きを見せている。

もちろん多くのことに気付けるのは凄いことだ。しかし、サッカーは11人でやるスポーツであり、意外と若手に任せてもやれるタスクもある。そして現在の倉田には、最終的に一歩届かない場面が多く出ている。攻撃面であと一歩パスに届かず、今季のJ1では未だ無得点。守備ではあと1m隣にいたら防げたパスコースに届かずに後追いをしなければいけないなどだ。32歳という年齢的な衰えが理由ではなく、全てに関与しようとして自分のポジショニングが中途半端となっているために生じている弊害である。

若手に任せることも成長を促す手法の1つであり、チーム力を引き上げるためにもなる。本来はそれを監督がマネジメントしなければいけない。外見とは違って思い詰めるタイプの倉田は「チームのために」と考えているだろう。それだけガンバのことを誰よりも愛している。その気持ちは痛いほど伝わって来る。

今の倉田は選手個人としての持ち味や本来の武器を見失ってしまっている。「本気で自分の武器を取り戻して欲しい」と考えているファン・サポーター、そしてチームメイトも多いのではないだろうか?2列目でも3列目でも、倉田が持ち前のドリブルや運動量を攻撃の仕掛けの場面で使うことができれば、チームの攻撃のバリエーションが拡がる。年間7、8得点は計算できる倉田を始め、小野瀬康介ら、他のMF陣の得点力も自然と上がって来るはずだ。


ガンバ大阪MF倉田秋 写真提供:Gettyimages

倉田を“出木杉くん”にしてはいけない!

藤子・F・不二雄氏による超人気アニメ漫画『ドラえもん』には、“出木杉英才(できすぎ・ひでとし)”という準レギュラー級のキャラクターが登場する。名前の通り何でもできてしまう秀才キャラなのだが、登場する回数は少ない。『ドラえもん』はノンビリ屋の主人公である“野比のび太”が数々の問題に直面するストーリー展開であり、出木杉くんが登場するとすぐに解決してしまうからだろう。特に映画シリーズは2時間前後の尺が存在する。世界的問題を30分以内に解決されては間がもたない。

サッカーというスポーツも、ハーフタイムやアディショナルタイムを含めれば映画と同じく1試合に2時間ほどを要する。倉田は出木杉くんになりたいかもしれないが、出木杉くんになるとフル出場はできなくなってしまう。30分未満の交代出場で良いのならば出木杉くんを目指せば良いが、もっと気を緩めて自分の役割に全うすることも必要だ。また、本当に出木杉くんになってしまうと過重労働で負傷離脱の危険も出てくる。

「倉田を出木杉くんにしてはいけない!」例え話だが、そんなことを笑って話せる日が近い未来に来て欲しいものである。

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