
スケールの大きなプレーを可能にする“後出しジャンケン”
「サッカー選手としても人としても成長させてくれたチームに感謝していますし、なでしこリーグ通算100試合出場も全てハリマで達成できたことを誇りに思っています」
と語る千葉は、チーム在籍9年目でハリマ唯一の創設メンバーでもある。前述したようにプレーエリアの広い彼女は様々なポジションを経験して来た。
だからこそ、ずっと気になっていることがあった。彼女の本当の武器は何なのか?すると、本人も「分からない」と言う。チームのバランスを考えて献身的にプレーしてきた中で、やや見失っていたものがあるのかもしれない。
そんな彼女が現在、「得点王を目指している」とシンプルに、そして力強く答えてくれたのは面白い。
2016年6月2日、アメリカのコマース・シティで行われた女子国際親善試合、日本VSアメリカ戦。筆者はトップ下として先発した“お団子頭”の選手に魅了された。サッカー選手としてだけでなくアスリート能力の高い世界女王の選手たちを相手に、代表デビュー戦だった彼女は局面での1対1で当たり負けしないどころか、相手に体を預けて巧みにボールをキープし、攻撃の起点になっていた。守備の局面でも際立つ運動量で果敢に守備のスイッチを入れ続けていた。その“お団子頭”の選手こそが、千葉園子だった。
彼女はテクニックやスピードに優れ、閃き溢れる攻撃のアイデアも魅力なアタッカーだが、それらを繋ぎ合わせるためのフィジカル的な強さを兼ね備えるプレースタイルは独創性に溢れている。緩急を操り、柔も剛も感じさせるプレーぶりは観る者を虜にするのだ。
意表を突くロングシュートや空中戦の強さのような豪快なプレー、“10番”らしいテクニカルなドリブルやスルーパスでのチャンスメイク、裏への抜け出しやカウンターで一気にゴールへ持ち込むスピード溢れるプレーの迫力、身を挺した守備で味方を牽引する姿など、彼女のプレーはスケールの大きさが際立つ。バスケットボールだったら、得点とリバウンドとアシストのトリプルダブルを何度も達成するような選手かもしれない。
1つ1つのプレーに注視してみると、さらに面白い。
「テクニック」「スピード」「フィジカル」をそれぞれジャンケンの「グー」「チョキ」「パー」のように喩えると、相手選手が「グー」を出してきたら「パー」を、「チョキ」で来たら「グー」を出すように、どの要素に相手より優位性があるのかを判断して局面をシンプルに打開していく。1対1のデュエルに優れる彼女は“後出しジャンケン”をしているようにも見えるのだ。
映画『さよなら私のクラマー ファーストタッチ』では主人公・恩田希のプレーが、「ノンちゃんのフットボールには夢がある」と表現される場面がある。
“そーちゃん”のフットボールには夢があるのだ。
関連記事:なでしこASハリマ、千葉園子インタビュー【前編】映画『さよなら私のクラマー』と中学時代
千葉園子プロフィール
1993年6月15日(28歳)出身:大阪府大阪市
身長:162cm、体重:48kg
所属チーム:ASハリマアルビオン(2013-)
ポジション:MF、FW 背番号:10
なでしこジャパン通算:5試合0得点
なでしこリーグ・チャレンジリーグ通算:120試合41得点(今季:10試合4得点)
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