ブンデスリーガ

堂安と奥川が救う!ビーレフェルトが勝ち取りたいサスティナビリティ

クラマー監督就任後のビーレフェルト基本布陣 作成:筆者

モダンにアップデートされた日本人コンビ

そんな中、指揮を任されたフランク・クラマー新監督はレッドブル・ザルツブルクのアカデミーやドイツのユース代表での確かな実績がある育成型指導者で、プレッシング戦術に長けている。

新監督はサイドアタッカーを起用しない「4-3-1-2」を採用し、中盤での密度の濃いプレッシングを重視。チームはDFラインを高く押し上げて攻守両面でコンパクトになり、モダンなスタイルを体現。20本以上のシュートを放つ試合もあるなど変貌を遂げた。

そして、チームと共にアップデートされているのが日本人コンビ(堂安&奥川)なのである。

今季開幕直前、オランダのPSVアイントホーフェンからレンタル移籍でやってきた日本代表MF堂安律は加入直後から主力として定着。4得点3アシストを記録し、MFながらチーム最多でリーグ全体8位となる61本のシュートを放つなど、チームの絶対的な柱としてプレーしている。また、卓越したドリブルスキルや体幹の強さを活かしたキープ力の高さもあり、デュエル勝利数もリーグ8位の352回と大活躍している。

そんな堂安を新監督はこれまでの定位置である右サイドMFではなく、FWやトップ下として起用。攻撃の幅よりも、奪って速く攻める「縦への推進力」を優先しているのだ。

チームNo.1の個人技を持つ「堂安をどのエリアで活かすのか?」は以前からチームの課題でもあったが、モダンなサッカーへアップデートされた現チームでは、「FW堂安」は最適解である。

そして、冬の移籍市場で指揮官の古巣ザルツブルクから加入したMF奥川雅也は、京都サンガの下部組織時代から「古都のネイマール」と呼ばれたドリブラーだった。

しかし、現在の奥川はオーストリアの強豪で欧州最先端のプレッシング戦術を体得。前へボールを奪いに出る場面でも、プレスバックで戻る場面でも献身的にプレーできる。“闘えるインサイドMF”として新境地を開拓し、初ゴールも奪った彼は指揮官が信頼を寄せる残留のキーマンである。


堂安律 写真提供:Gettyimages

残留より重要視するサスティナビリティ

ビーレフェルトは2010年代に3部降格を2度経験し、クラブライセンスの交付すら危ぶまれるチーム消滅の危機に陥った。現在はコロナ禍が続く状況だが、ドイツ紙『キッカー』にて、「もうそれはないよ」と、スポーツディレクターとしてクラブの運営やチーム編成を担うサミ・アラビ氏は言う。

また、アラビ氏はこう説明した。「クラマー監督を招聘したのはトップチームとユースチームで豊富な経験をもつ専門性や分析力がクラブにマッチしたからだ。クラブは将来的に若手選手の育成により力を入れ、ユースのトレーニングセンターを拡充し、トップチームが身近になるよう独自のチーム編成の最適化をはかっている」

1部昇格を掴み、経営的にも安定し、サッカーのスタイルもモダンになってきた彼等には、目先の結果以上に持続可能な価値(サスティナビリティ)が必要なのである。

それは自前の若手育成だけでなく、堂安や奥川のような強豪クラブで出場機会が少ない若手が武者修行を積む場所としても魅力的なはずだ。

果たして、堂安と奥川は40年近く前から日本人を登用してきたビーレフェルトを1部残留へ導けるのか?

ビーレフェルトは走行距離で2位、デュエル勝利数はトップを記録しているように、最後まで諦めずに闘うゲルマン魂の集団である。

データ参照:ブンデスリーガ公式

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