Jリーグ

【J2タイム】日本サッカーが世界に誇れる武器=J2の魅力

ミハイロ・ペトロヴィッチ監督 写真提供: Gettyimages

ミシャスタイル、湘南スタイルなど戦術マニアも注目

香川とフッキが毎週末のJ2で大暴れしていた頃からすでに10年以上の月日が過ぎた。当時はフィジカルよりも技術が優先されるJ1よりも、J2は激しい肉弾戦や縦志向の強いリーグとしての傾向が欧州サッカーにマッチし、欧州での成功を後押ししたと考えられる。

その後、J2は毎年参入クラブ数を増やし、2012年に現行の22クラブ制となった。2011年シーズンまでは降格制度がなく、2012年と2013年も降格枠は僅か1クラブのみだった。

降格に怯えることがなかったため、チーム編成や戦術的に大胆で冒険ができるのも魅力だ。財政的な制限があるならば、J1の有力な若手をレンタル移籍で加入させて鍛えることで武者修行先となる愛媛FCのようなクラブもある。継続性の面からは問題はあるが、知恵と工夫を感じられるのはJ2の魅力の1つだ。

2008年のサンフレッチェ広島がミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現・北海道コンサドーレ札幌)の下で攻撃時は「4-1-5」、守備時は「5-4-1」になる可変システムを世界に先駆けて生み出したのはJ2である。湘南ベルマーレの「湘南スタイル」もJ2発だ。

2014年にJ3が創設され、降格の危険もある現在はより戦術的に多様化された。攻撃的、守備的なだけでなく、セットプレーの多彩さやカウンターにかける人数や種類、プレッシングをかける位置で戦術に特徴をつけるという緻密さは戦術マニアにも人気になった。

2016年からJ2に参入しているレノファ山口は“広島流”の上野展裕氏、日本サッカー協会の技術委員長を務めた霜田正浩氏、J1ベガルタ仙台でポジショナルプレーを導入した渡邉晋氏という似たサッカー観を持つ指導者を監督に据え、チームのスタイルを越えたクラブ独自のゲームモデルを確立。今ではJ1の若手選手たちが「1年はあのチームでプレーしてみたい」という独自の魅力を持つクラブとなっている。


日本代表 2018FIFAワールドカップロシア 写真提供: Gettyimages

欧州レベルな移籍市場の活性化

2018年にはロシアW杯での日本代表の躍進により、有力な若手選手の海外移籍がさらに加速。日本と欧州各国リーグのシーズンの違いもあり、Jクラブからはシーズン真っ只中の夏に引き抜きに遭遇することが頻繁化していく。

J2から欧州へ直接引き抜かれる可能性もあるが、当然ながら欧州クラブに青田買いされるのはJ1である。また、外国籍選手に関してはJリーグで結果を出したブラジル人FWが中東や中国へ引き抜かれる例が15年ほど前から現在も続いている。

こうした際、J1クラブが戦力を穴埋めするためにJ2クラブの主力をシーズン中に軒並み引き抜く傾向が近年さらに強くなった。上記したレノファ山口やリカルド・ロドリゲス前監督が「日本サッカー+スペイン流」を4年間かけて融合させ、J1昇格へ導いた徳島ヴォルティスなどは最先端トレンドな戦術眼を養って経験を積めるチームであるため、J1への“納品先”が多く、毎年のように草刈り場となっている。引き抜いた選手がJ1でも即戦力として活躍する例が多いため、この流れは一般化された。

それでも徳島がスペイン1部リーグでの豊富な経験を持つスペイン人のベテランFWダビド・バラルを獲得するなど、独自のルートを作って創意工夫するクラブも現れた。J3からの引き抜きやJ2の若手をJ3へレンタル移籍させたり、J3クラブがJFLや地域リーグから逸材を発掘していく流れも生まれている。

結果的に昇格と降格の両方がある競争力が半端ないリーグとなったJ2の繁栄は、日本の移籍市場を欧州レベルにまで活性化させたと言える。

J2の真価が問われる今季、連載【J2タイム】始めます!

しかし、昨年から続く新型コロナウイルス感染症の影響で昨季はJ1とJ2に降格制度がなく、今季はJ1もJ2も4クラブが下位カテゴリーへ降格するレギュレーションとなった。

逆に昨年同様J1への昇格は上位2チームの自動昇格のみ。昇格プレーオフは実施されず、これが今年のJ2にどのような影響を与えるのか?最終節まで多くのクラブが昇格プレーオフ出場権を巡るポジティブな盛り上がりがなくなり、自動降格4枠の恐怖に怯えるのか?

今年のJ2の成否で格段の進化を見せて来た世界に誇れる国内2部リーグ=J2の真のチカラが試される。

そんな今季のJ2に注目するため、【J2タイム】と題してJ2に関する連載をしていきます。お楽しみに!

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