プレミアリーグ アーセナル

アーセナルのオフェンス崩壊説。その真相とは?

写真提供: Gettyimages

著者:秕タクヲ

「説明できないことがあるのもフットボールの醍醐味なのだ」

これはペップ・グアルディオラが夏のインタビューで残したコメントだ。まさにその通り。あの理論派完璧主義であるカリスマも、スポーツに潜む魔物の存在を認知しているのだ。

しかし、昨今の技術革新によりその魔物の正体が暴かれつつある。あらゆる現象が映像化・数値化され、ビッグデータとして蓄積される体制がフットボールにおいても整ったからだ。「感覚で考える」時代はいつか終焉を迎えるのだろうか。

今回はそういったことを考えながらアーセナルの攻撃事情について語りたい。テーマは「オフェンス力をどう考えるか」である。結論、アーセナルのオフェンスは危機的状況であると考えている。おやおや、過去3シーズンリーグ戦70得点以上、今シーズンでは既に13得点と上々の結果ではないかと一見思われがちではあるが、実態はかなりマズいのではないかと嘆く識者も多い。その核心について触れていこう。


画像: 得点者構成比

【重度の依存体質】

上記は10/20時点のプレミアリーグ得点数上位7チームのスコアラー構成比である。チーム内最多得点選手を強調しているデータになるのだが、ピエール・エメリク・オーバメヤンがアーセナルの「54%」もの得点を叩き出していることがお分かりいただけるだろうか。

確かに9月のプレミアリーグ月間MVPに選出されるなど素晴らしいゴール活躍を見せているのだが、マンチェスター・シティやリバプール、チェルシーなどの相対的に考えると偏重したスコアラー構成が顕著である。裏を返せば、オーバメヤンしかゴールできないという印象を植え付け、彼一人への対策ができれば勝機ありと見る人が多い。昨シーズンからも時折オーバメヤンが試合にフィットしない試合はアーセナルは苦戦する傾向にあった。今シーズンはその対策としてニコラ・ぺぺを補強したが、PKによる1得点とオープンプレーからの得点はまだ達成できていない。柔らかいボールタッチからのチャンスメイクは絶妙だが、本人もゴールを渇望していることだろう。オーバメヤンを援護射撃するためにもまずはペペの奮起に期待したい。


【偶発的なゴール】

アーセナルのオフェンスに不安因子がもう1つ挙げられる。それは偶発性である。冒頭にも述べた「理論的なゴール」ではないということだ。ここでは昨今フットボールを語るデータの中で重要性が増している「xG値」を参考にしていきたい。

xG値とは過去のゴールパターンを統計化した上で算出された試合内容を数値化したものであり、xG値よりも少ないゴール数であれば「本来であればゴールしていたが、不運にもゴールできなかった」、反対に多いゴール数であれば「本来であればゴールではないが、幸運にもゴールが決まった」と考えればいい。

画像: プレミアリーグ得点ランキングとxG値

上記は10/20時点のプレミアリーグ得点ランキングとxG値と照らし合わせたデータであるが、オーバメヤンのゴール数はxG値から大きく上振れしていることが分かる。ここから考えられることは、「①かなりノーチャンスに近いゴールを決めきった」「②相手の致命的なミスによりゴールを許した」などが挙げられる。思うに開幕戦のニューカッスル戦のゴール、第6節アストン・ビラ戦での決勝点、第7節のマンチェスター・ユナイテッド戦での同点弾は「相手の致命的なミス」によるものと言ってもいいだろう。ただ、決定的な仕事ができるという意味では彼は今のアーセナルにとって、なくてはならない唯一無二の存在であることがわかる。

また、昨シーズンのアーセナルの得点数は73、対してxG値は64.80。あまりにも出来すぎた結果であるというのも決して否定することができない。勝ち点は70に対してxPtsは58。これはウルブスを下回る7位、レスターやエバートンを僅差で上回る結果である。ペップの語る「フットボールには説明のつかないことがある」という言葉はまさにアーセナルにとって救いのフレーズとして聞こえる。


写真提供: Gettyimages

仮にオーバメヤンが怪我をしたときはどうするのか?オーバメヤン以外でもゴールネットを揺らす戦術を持ち合わせることは今からできるのか?実際に選手間でコミュニケーションがしっかり取れているのか?こうした課題に対するアンサーを見出しているとは言えないのが現状のようだ。怪我から復帰するアレクサンドル・ラカゼット、ニコラ・ぺぺの奮起に期待したいが、また同じ問題を抱えることにならないことを願いたい。

今シーズンの出来が正念場。アーセナルの未来は果たして輝いているのか。それとも。


 

名前:秕タクオ

国籍:日本
趣味:サッカー、UNO、100均巡り

サッカー観戦が日課のしがないサラリーマンです。かれこれ人生の半分以上はサッカー観戦に明け暮れ、週末にはキルケニー片手にプレミアリーグやJリーグにかじりついています。

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