Jリーグ サガン鳥栖

サプライズをもたらした竹原社長からフィッカデンティに渡された“バトン”

株式会社サガン・ドリームスの竹原稔代表取締役社長 写真提供:Getty Images

「背伸びしてでもしっかりした選手を補強する」

 この一言でサポーターと固い約束を交わした竹原社長は、周囲の想像をはるかに上回る“新戦力”を連れて来る剛腕ぶりを発揮することとなる。

 フェルナンド・トーレス。フットボールファンならば誰もが知っているこの元スペイン代表ストライカーの名前がメディア上で5月中旬以降騒がれるようになるも、5月末のあの“誤報”事件を境に根拠のない様々な噂が飛び交うこととなった。

 その中、クラブ首脳陣は最初に豊田陽平のレンタル打ち切りによる復帰を決めている。2010年から昨季まで8シーズン在籍しているサガン鳥栖の“漢”は、ゴールのみならず、前線からの激しいプレッシングでもチームに多大なる貢献をもたらしている。復帰決定直後の「豊田は鳥栖のために。鳥栖は皆様のために」という一言に彼の性格やプレースタイルは凝縮されており、降格圏内に低迷するチームに強靭なメンタリティをもたらすことだろう。

 この豊田の復帰は、残念ながら一部メディアの報道によりフェルナンド・トーレスの交渉が破談に終わったのではないかという不安が鳥栖サポーターのみならず、全国のフットボールファンの間で広がりを見せていた。しかしこの憶測はやがて竹原社長の巧みな交渉術によって杞憂に終わることとなる。

竹原稔代表取締役社長とフェルナンド・トーレス 写真:www.sagan-tosu.net

 7月15日、トーレス本人が竹原社長と東京都内の帝国ホテルの会見場に姿を現した瞬間の衝撃度は、間違いなく今夏ヴィッセル神戸に加入したアンドレス・イニエスタのそれに匹敵するものであると感じたファンは多いはずだ。

 日本語でのあいさつに始まり、無数のシャッターが切られる中で行われた記者会見では様々な質問が飛び交う中、フェルナンド・トーレスの放った「(様々な報道が飛び交う中)社長とは毎日のように話を重ねたし、僕に考える時間を与えてくれた」という言葉は、フットボーラーとしてのキャリアの熟考を重ねる同選手の意見を最大限に尊重した竹原社長の交渉が称賛に値することを意味しているだろう。

 これまでのサガン鳥栖では考えられないようなビッグネーム獲得に周囲が湧く中、今夏の“サプライズ”はさらに続く。なんと今度は「オリジナル10」の一角を担う鹿島アントラーズから、かつてサムライブルーのユニフォームにも袖を通した経験を持つ金崎夢生の獲得に成功したのだ。

鹿島アントラーズ在籍時の金崎夢生 写真提供:Getty Images

 2度の経営危機を乗り越え、2012年に初のJ1昇格を果たしたクラブによる国内最多タイトルホルダーの主力の“引き抜き”は、サガン鳥栖サポーターのみならず、他クラブサポーターにも大きな驚きを持って伝わっていることだろう。同時に移籍市場におけるサガン鳥栖の地位が確実に上昇していることを他クラブサポーターは認知したかもしれない。

 こうして竹原社長はじめとするクラブ首脳陣は、「得点力向上」という最優先課題に対し、3人の点取り屋獲得という大仕事を成し遂げたのだった。

ページ 2 / 3