ブンデスリーガ 海外日本人選手

マインツ1部残留の立役者となった武藤嘉紀。満を持して迎える2つのターニングポイント

著者:マリオ・カワタ

 5日、敵地ジグナル・イドゥナ・パルクに乗り込んだマインツが試合開始直後に先制点を奪ってから9分後のことだった。左サイドのパブロ・デ・ブラシスがゴール前に入れたクロスに武藤嘉紀が完璧なタイミングで飛び込み、強豪ドルトムントを相手に貴重な2点目のゴールを叩き込む。マークについたエメル・トプラクとGKロマン・ビュルキの前に入り込む巧みなポジショニングと、打点の高いヘディングが光るフィニッシュだった。

 この得点で2点を先行したマインツは2-1でドルトムントを振り切り連勝を達成したことで、来季のブンデスリーガ残留が決定した。ドイツ誌『キッカー』が「ドルトムントのバイグルをチームから孤立させた」と相手アンカーに対する守備の対応を称賛したように、武藤は守備でも大きな貢献を見せ、この試合のマンオブザマッチに選出されている。『ビルト』も「マインツを土壇場で救った選手の一人。ドルトムント守備陣にとって常に厄介な存在だった」として、高評価を与えている。

 最終節を待たずにハッピーエンドを迎えたマインツだが、1ヶ月前の時点では武藤とチームの先行きは明るいものには見えなかった。武藤は筋肉系の故障により戦線離脱を余儀なくされ、チームは2部リーグ3位との入れ替え戦に回る16位に沈んでいたからだ。さらに一時は降格が実質的に決定したかに思えたハンブルガーが驚異的な粘りを見せており、仮に調子が上向いていなければ自動降格の危機が近づいていてもおかしくなかった。

 それだけに、今季チーム最多得点の武藤がシーズンの終盤に戻ってきたことはマインツにとって非常に大きな意味があった。ドルトムント戦一週間前のライプツィヒ戦で先発復帰すると、日本人ストライカーはすぐさま大仕事をやってのけた。前半に難しい体勢でゴール前でボールを受けると巧みにターンを試みて先制点となるPKを獲得し、後半にはクロスボールをワンタッチで落として2点目をお膳立て。武藤が演出したゴールによって、チームはチャンピオンズリーグ出場を争うチームから勝ち点3を挙げて残留に大きく前進したのだった。

Previous
ページ 1 / 2