
愛知・名古屋で開催中の第20回アジア競技大会のサッカー競技で、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)代表が男女共に注目を集めている。
男子は9月26日の準々決勝(豊田スタジアム)で大岩剛監督率いるU-21日本代表に0-1で敗れたが、球際の強さでは日本を圧倒する場面もあった。女子はグループステージで同組の韓国代表と1-1で引き分けたものの、得失点差で首位通過。準々決勝でチャイニーズ・タイペイ(台湾)を5-1、準決勝で中国を2-0で下し、10月2日の決勝(エコパスタジアム)でなでしこジャパン(日本女子代表)と金メダルを懸けて戦う。
国際社会で外交的に孤立する北朝鮮は、どのように選手を強化し、少ない対外試合の中でチームを維持しているのか。国家主導の長期合宿、厳格な選抜制度、限られた国際親善試合を組み合わせた独自の強化の仕組みを、大会での成績や育成システム、親善試合の相手国などから考察したい。

アジア大会、男子は日本に惜敗も女子は決勝へ
2026年アジア競技大会の男子サッカー(U-23+オーバーエイジ枠3)で、北朝鮮代表はグループBに入り、中国に1-2で敗れたものの、UAE(アラブ首長国連邦)と0-0で引き分け、最終戦でイランに4-1と大勝して2位通過を果たした。準々決勝では日本に惜敗し、大会を去った。
日本は前半39分にFWンワディケ・ウチェ・ブライアン世雄(オールボーBK/デンマーク2部)のゴールで先制したが、北朝鮮側はンワディケのファウルを主張して主審に詰め寄り、一度はピッチから選手全員が立ち去るような一幕もあった。試合は日本がその1点を守り切ったが、インテンシティの高さ、ファウル覚悟の接触プレーに苦しめられた。
前回の2023年杭州大会の準々決勝でも両チームは対戦し、日本が2-1で勝利したが、北朝鮮イレブンによる危険なタックルや給水ボトルを巡る威嚇、試合後の審判団への抗議が問題視され、日本サッカー協会がAFCとFIFAに意見書を提出した経緯がある。
決勝に進出した女子の北朝鮮代表はアジア大会で過去に何度もメダルを獲得しており、育成世代別代表も世界大会で好成績を残している。この結果は、外交的制約の中でも競争力を維持している証しといえる。

国家主導の選手養成と平壌国際サッカー学校
北朝鮮は核・ミサイル開発を巡る国際制裁により、多くの国とのスポーツ交流が制限されている。日本も原則として北朝鮮国籍者の入国を禁じているが、アジア大会ではスポーツ特例で選手団の入国を認めた。選手たちは滞在中も行動が厳しく管理されているという。
こうした環境下で強化を進める柱が、国家による選手養成制度と長期合宿だ。代表選手はクラブより代表での活動を優先される。2016年から2018年に男子北朝鮮代表監督を務めたノルウェー人のヨルン・アンデルセン監督によると、代表選手は平壌のトレーニングセンターで寝食を共にし、毎日1日2回、クラブチームのように練習していたという。女子も基本的に男子と同様のハードな2部練習をこなす方針だった。
育成の中核施設が2013年5月に平壌・綾羅島に開校した平壌国際サッカー学校だ。サッカー好きでもある金正恩総書記の指示で設立され、全国から有望な児童・生徒を選抜し、小学班・初級班・高級班に分けて、寮生活の中で学業とサッカーの専門教育を並行して行う。施設の建設にはFIFAの支援も受けており、人工芝や天然芝のピッチなど最新設備を備える。同校は国内体育団(4・25体育団、鴨緑江体育団など)や代表に卒業生を送り出している。
北朝鮮の選手育成プロジェクト1期生としてイタリアのアカデミーで育ち、G7で最も早く北朝鮮と国交を結んだ同国(セリエAのカリアリ、セリエBのペルージャなど)でプレーした男子代表FW韓光成(ハン・グァンソン)ら、女子ではU-17やU-20の世界大会で活躍する選手の多くが、この学校や同様の育成ルートを経ている。
選抜は厳格で、練習に付いていけない選手は脱落する仕組みという報告もある。勝利を「愛国心の証明」と位置付ける精神教育も重視され、その結果、フィジカルの強さや組織力、球際の激しさとして表れる。
コメントランキング