6月6日に国立競技場にて、サッカー日本代表がブラジル代表と対戦すると発表された(キリンチャレンジカップ2022)。FIFAランキング23位の森保一監督下の日本は、これまでA代表(フル代表)では1度も勝ったことのない同1位ブラジルを相手に、どういった試合を見せられるだろうか。
ちなみに直近のブラジルとの対戦は、ヴァヒド・ハリルホジッチ監督が日本代表を率いていた2017年11月10日(スタッド・ピエール=モーロワで開催された親善試合)。この時はDF槙野智章が得点を挙げるも、1-3で敗れている。
ここでは、新たな国立競技場で初の試合となる強国ブラジルとの一戦に向け、過去の対戦において日本が見事な戦いぶりをみせた2試合を振り返りたい。
1996年アトランタオリンピック第1節「マイアミの奇跡」
前述したように、年齢制限のないフル代表で日本がブラジルに勝利したことはない。それでもフル代表に最も近い、23歳以下の五輪代表は白星を記録している。1996年7月21日。アトランタ五輪男子サッカー競技に出場した日本は、初戦でブラジルと対戦した。
この大会のブラジルの監督はA代表のマリオ・ザガロ監督が兼任し、A代表にも入っていたロベルト・カルロス、ロナウジーニョ、ジュニーニョ・パウリスタ、サヴィオ、フラビオ・コンセイソンらがメンバー入り。さらにオーバーエイジ枠でベベット、リバウド、アウダイールを加えた豪華布陣を揃え、優勝候補筆頭と言われていた。
対する日本は28年ぶりの五輪出場。オーバーエイジ枠は使用せず、A代表経験があったのは前園真聖と城彰二のみ。下馬評ではブラジルが圧倒的有利だと目されていた。サッカーで「ジャイアントキリング」を起こすためには「0-0の時間を長くすることが大切」とよく言われる。この試合は、この言葉を実現結果に現れたものだった。
会場はフロリダ州マイアミ。観客のほとんどは、豪華なブラジルイレブンを観にきていた。ブラジルは序盤から日本を圧倒し、シュートの雨あられをGK川口能活に浴びせる。それでも日本のイレブンは身体を張ってシュートコースを消し、川口はゴールに迫るボールを掻き出し続けた。
前半を終えて0-0。後半に入ると、ブラジルはさらにエンジン全開に。ポスト直撃など紙一重の場面は何度もあったが、武蔵坊弁慶のごとくゴール前に立ちはだかる川口の牙城は崩せない。
試合が動いたのは、後半27分。事前の分析でブラジルのほぼ唯一ともいうべき弱点、CB2人の背後のスペースに向けて、左WBの路木龍次がロングボールを送る。そこに走り込んだ城彰二を防ぐべく飛び出したGKジダと、懸命に戻ったCBアウダイールが交錯。こぼれ球を伊東輝悦が押し込んで日本が先制した。
ブラジルは選手交代も含めさらに攻勢を強めるが、身体を張ったディフェンス、川口の好セーブ、ポストまでもを味方につけ、日本が1-0の大金星を飾った。
「五輪史上最大の番狂わせのひとつ」と言われるものを日本が起こしたこの事実があるからこそ、筆者はオリンピックやワールドカップで日本がどのような組み合わせになろうとも強い希望を持てている。
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