サッカーセンスは遺伝によるものではないと思われる。父がどんなに偉大でも、子が必ず活躍できるとは限らない。むしろスター選手の子は幼い頃から期待され、苦行を強いられることの方がずっと多いだろう。
もちろん世界には、父子揃って高いレベルで活躍している選手もいる。90年代パルマの黄金期の主要メンバーであるエンリコ・キエーザと、その息子フェデリコ・キエーザ(現ユベントス)。1995年にアフリカ人として初めてFIFA最優秀選手賞とバロンドールを受賞したジョージ・ウェアと、その息子ティモシー・ウェア(現リール)などだ。
ここでは、有名なレジェンド選手たち(アンドレア・ピルロ、ルート・フリット、ディエゴ・マラドーナ、デビッド・ベッカム、ペレ、ロベルト・マンチーニ)の子として、サッカー選手という同じ道を選択しながら、父のようなスターにはなれなかった6人を紹介しよう。
ニコロ・ピルロ(父:アンドレア・ピルロ)
アンドレア・ピルロ(ユベントス前監督2020-2021)は、かつてミラン(2001-2011)とユベントス(2011-2015)の選手として大活躍し、2006年FIFAワールドカップにてイタリアを優勝に導いたレジェンドMF。彼には、大きな苦しみを抱えながらサッカーを続けたニコロという息子がいる。
ニコロは、2022年1月までトリノの近くにある町ペチェットでMFとしてプレー。地方大会とはいえ、チームを引っ張るような存在であったという。しかしながら、ニコロの公式SNSには父と比較されるコメントが溢れた。また父のユベントス指揮官としての成績不振に伴い、父の死をも願うコメントまでを受けた。
ニコロにとって、サッカーは幼い頃からの趣味だったという。現在は18歳にして本格的なプレーからは離れたが、サッカーをコンセプトにしたファッションブランドを立ち上げ、コラボ企画の提案を募集している。また、募金を集めることを目標にしたインフルエンサーによるサッカーチームで、プレーも続けているようだ。
マキシム・フリット(父:ルート・フリット)
1987年にバロンドールを受賞し、ミラン(1987-1993)で「オランダトリオ」の1人として活躍した元オランダ代表のレジェンドFWルート・フリット。彼の息子マキシムは、2017年にAZアルクマールの下部組織に加入し、2019年に同クラブのリザーブチームであるヨングAZ(オランダ2部)でデビューした。ポジションはDF。
2021年7月にトップチームに加入したマキシムだったが、8月には1部昇格を果たしたSCカンブールにレンタル移籍。残念ながら出場機会がほとんどなく、さらには2022年3月に膝を怪我し大手術を受けた。ピッチに復帰できるタイミングは未定である。
まだ20歳にしてこれからの成長で可能性は十分ある。しかし現時点での活躍では、父のような存在になることからは程遠いと言えよう。ちなみにマキシムの母親は、ヨハン・クライフ(60年代70年代のスーパースターであり監督としても成功)の姪で知られる。
マラドーナ・シナグラ・ジュニオル(父:ディエゴ・マラドーナ)
言わずと知れた元アルゼンチンの天才FWディエゴ・マラドーナ。ナポリ(1984–1991)在籍時の隠し子として話題となったのが、マラドーナ・シナグラ・ジュニオルである。シナグラはイタリア人MFとして多くの地方クラブでプレーし、1度だけだがイタリア代表U-17に選抜された実績も持つ。
しかしサッカーでは父のような活躍ができないと感じたか、シナグラはその後ビーチサッカーに転向した。2009年のFIFAビーチサッカーワールドカップではイタリアのキャプテンとして出場。決勝トーナメントに進出を果たすも、準々決勝でブラジルに敗れている。
2021年には、イタリア5部のナポリ・ユナイテッドにて監督をも初経験。グループBで3位という良い結果を残し、4部昇格の可能性も十分ある。
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