2020年8月9日。セリエA9連覇中のユベントスは、指導経験のないアンドレア・ピルロをトップチームの新監督に就任させるという意外な判断をした。
確かに選手時代のピルロが、勝ち方を忘れていたビアンコネーリ(ユベントスの愛称)に再び栄光をもたらしたのは紛れも無い事実である。現役引退前の5年間(2011-2015)で4度のリーグ優勝(2011/12、2012/13、2013/14、2014/15)に貢献するなどし、素晴らしいリーダーとしてチームを導いた。
とは言え、監督経験の無い者がチャンピオンズリーグ(CL)優勝を目指すクラブの指揮官を務めることはできるものだろうか?その答えは「ノー」である。
2020/21シーズンが終わりに近づく今、ピルロ監督下のユベントスはCLベスト16での敗退だけでなく、余程の奇跡がない限りセリエA10連覇を果たすことも難しい状況になっている。
そんななか一方のピルロ本人は、解任などまるで心配していない模様だ。ユベントスの昨今の流れを振り返り、その理由を見てみよう。
そもそもの誤りはサッリの就任
欧州クラブの夢であり、最も権威ある国際大会にして頂点を意味するCL優勝。そこにたどり着くにはレベルの高い選手、国際的に優勝経験のある監督はもちろんながら、チームとしての一体感も必ず重要となってくる。
その意味でも、ユベントスがマッシミリアーノ・アッレグリ監督(2014-2019)解任後に元ナポリのマウリツィオ・サッリ監督(2019-2020)を選んだことは、そもそもの失敗だと言ってもいいだろう。
サッリはアマチュアクラブから監督キャリアをスタートしたにもかかわらず、ヨーロッパリーグ優勝(チェルシー、2018/19)まで成し遂げた申し分ない敏腕監督である。しかしながら、ユベントスのコンセプトから遠く離れたビジュアル(ジャージ姿、タバコの癖など)に加え、ナポリ時代(2015-2018)に何度もユベントスを敵対視する断言をしてきたなど、チームにそぐわない面が多く批判され一体感を欠いてきた。
サッリがフロント、選手、サポーターの信頼を得ることは最初から難しいことだったのだ。
ピルロの解任が考えにくい理由
セリエA9連覇を成しながらも監督選びに失敗したと判断したユベントスは、わずか1年でサッリを手放した(2020年8月)。しかしCL優勝なる高い目標を実現できそうな無所属の監督はいなかった。
ここでビアンコネーリはチームの一体感を第一に考え優先する。2020年7月30日に同クラブのU-23監督に就任したばかりのピルロを、トップチームの指揮官に抜擢。U-23監督就任から10日間後のことだった。彼を中心とした新しいユベントスを作る決断をしたのである。
経験が無いながらもピルロは選手にもサポーターにも愛され、ゲームビジョンもしっかり持った監督だ。クラブと共に成長し、素晴らしい指揮官に化ける可能性は高い。思い切った判断だったかもしれないが、ピルロの抜擢はそもそも長期間で考慮されているはずだ。従って結果が出ずとも今季のみでの解任は考えにくい。
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