ラ・リーガ レアル・マドリード

「銀河系」を束ねられるのは誰か?レアル・マドリード次期監督候補徹底分析

ウナイ・エメリ監督 写真:アフロスポーツ

キリアン・エムバペ、ヴィニシウス・ジュニオール、ジュード・ベリンガム――。世界屈指のスター選手を揃えるレアル・マドリードは、ピッチ上の戦力だけを見れば常に欧州最強クラスにある。しかし、その一方で繰り返されてきたのが「スターを束ねきれない監督」の短命政権だ。

2026年1月、シャビ・アロンソ監督の電撃解任とアルバロ・アルベロア暫定体制への移行は、成績不振以上に、ロッカールーム・マネジメントの難しさを改めて浮き彫りにした。戦術や実績だけでは生き残れない。それが“銀河系軍団”を率いるという仕事の現実だ。

では、次にこの難題を託されるのは誰なのか。ここでは、ウナイ・エメリ監督、ユルゲン・クロップ監督、ジネディーヌ・ジダン監督ら有力候補を中心に、スター選手の統率力、即効性、クラブ文化への適応という3つの視点から、レアル次期監督の適任者を徹底的に検証する。


監督交代の背景とクラブが求める条件

シャビ・アロンソ前監督は就任からわずか半年で解任された。スペイン紙『エル・ムンド』などによれば、その理由は成績不振に加え、主力選手との信頼関係構築に失敗した点にあるとされている。後任には、Bチーム(レアル・マドリード・カスティージャ)を率いていたアルバロ・アルベロア監督が内部昇格の形で就任した。

レアルが次期監督に求める条件は明確だ。第一にスター選手を束ねるマネジメント能力、次に短期間で結果を出す即効性、そしてクラブの歴史とアイデンティティへの理解である。常にタイトルを義務付けられるレアルにおいては、緻密な戦術以上に、選手のモチベーション管理とロッカールーム統率が重視される。今回の人事も、その特殊性を改めて浮き彫りにしたものと言える。

過去の教訓:銀河系集団を巡る失敗例

スター選手統率の難しさを象徴する事例が、2004〜2005年にレアルを率いたヴァンデルレイ・ルシェンブルゴ監督だ。ジネディーヌ・ジダン、ルイス・フィーゴ、デビッド・ベッカム、ロナウドら「銀河系集団」を抱えた同監督は、全員の長所を活かすために「魔法の四角形(4-3-1-2)」を導入した。

一時はラ・リーガ7連勝を記録するなど成果も見せたが、厳格な規律は次第に反発を招き、ロナウドの途中交代を巡ってペレス会長との対立が表面化。最終的に就任から約1年で解任された。ルシェンブルゴ監督自身も後年、「なぜロナウドを代えたのかと会長に問われた」と明かしている。

この一件は、戦術的に優れていても、スター選手と会長の力学を制御できなければ、レアルの監督は務まらないことを示す象徴的な教訓だ。


ウナイ・エメリ監督の可能性:本命候補

ウナイ・エメリ監督は、2022年11月からアストン・ビラを率いるスペイン人指揮官だ。就任以降、チームを着実に押し上げ、今季はプレミアリーグで上位争いを演じている。直近では、レアルが水面下でエメリ監督への接触を試みたとの報道もあり、次期監督候補として現実味を帯びつつある。

エメリ監督の最大の強みは、緻密な戦術設計と短期決戦での勝負強さだ。セビージャ、ビジャレアルでUEFAヨーロッパリーグを複数回制覇し、「カップ戦の名将」として確固たる評価を築いてきた。ビラでも欧州大会で結果を残しており、限られた戦力でも組織として最大値を引き出す能力は折り紙付きだ。

レアルにとって魅力的なのは、その即効性である。ビラを短期間でプレミアリーグ上位へ導いた実績は、スター軍団を預かる上でも重要な指標となる。スペイン人指揮官である点も、クラブ文化やメディア環境への適応という意味でプラス材料だろう。一方で、ビラとの契約は2029年6月まで残っており、招聘には高額な違約金が障壁となる可能性がある。


ユルゲン・クロップ監督の可能性:待望論が絶えない名将

リバプールを率いてUEFAチャンピオンズリーグ2018/19優勝、さらに2019/20シーズンには30年ぶりとなるプレミアリーグ制覇を成し遂げたユルゲン・クロップ監督は、現在レッドブルグループのグローバルサッカー部門責任者を務めている。それでも58歳という年齢を考えれば、現場復帰を期待する声が消えないのも自然だ。アルベロア体制発足後、クロップ監督の名前が次期候補として浮上したと報じられ、再び注目を集めている。

クロップ監督最大の武器は、選手の感情を束ねる圧倒的なカリスマ性とモチベーション管理能力だ。リバプールではスターと若手を融合させ、強烈なプレッシングと一体感のあるチームを築き上げた。レアルにおいても、エムバペをはじめとする個性と自我の強いタレントをまとめ上げられる指揮官として、高い期待が寄せられている。フロレンティーノ・ペレス会長がそのリーダーシップを評価しているとされる点も、待望論を後押しする材料だ。

一方で、不確定要素も多い。クロップ氏自身は事実上の監督業からの一線退きを示唆しており、本格的な現場復帰に踏み切るかは不透明だ。さらに、レッドブルグループとの契約関係や役職上の制約をどう整理するかも大きな課題となる。理想的な人選である一方、実現性という点ではハードルの高い候補と言えるだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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