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JFAがファンから資金を募る理由。“金欠”ではなく未来投資?

日本代表サポーター 写真:Getty Images

JFAが抱える矛盾と課題

クラウドファンディングの重要な目的の一つは、単なる資金援助ではなく、ファン・サポーターの共創意識を高めることにある。特に「サッカー日本代表の勇姿を、次世代を担う子どもたちに届けたい!」プロジェクトはその典型である。

これは代表戦の興行収入を賄うためではなく、次世代のファン育成という非収益的な目的のために、ファンが子どもたちを招待する活動に直接関与できる機会を提供している。これにより、ファンは単なる観客から、日本サッカーの未来を創る一員という意識を持つことができる。これは、JFAとファンとのエンゲージメントを深めるという、金銭的価値を超えた戦略的意味合いを持つ。

ただし課題もある。このプロジェクトは「経済的な理由でサッカー観戦をあきらめざるを得ない子どもたちに勇気や希望や感動を与える機会を作る」と謳っているが、国内開催のA代表戦チケットの最安値は席種・試合ごとに異なり、ダイナミックプライシングにより変動する。

たとえば10月10日のパラグアイ代表戦(パナソニックスタジアム吹田)では小中学生向けチケットが7,100円前後、10月14日のブラジル代表戦(東京スタジアム)では10,100円前後、11月18日のボリビア代表戦(国立競技場)では7,600円前後で販売される例がある(JFA公式チケット案内/席種や販売時期によって価格は変動する場合がある)。こうした価格設定を見て現地観戦を控えるファンも一定数いる可能性があるのではないだろうか。


日本代表 写真:Getty Images

クラウドファンディングに乗り出す意味

クラウドファンディングは資金調達の手段であると同時に、プロモーション機会でもある。フットサル女子代表のW杯出場支援を募ることは、その競技自体の存在や直面している課題を広く一般のニュースとして認知させる効果がある。

かつては一部で“ネット乞食”などと揶揄されてきたクラウドファンディングだが、JFAという巨大組織がここに乗り出すことで話題となり、普段フットサルに関心のない層にも情報が届く。これはマイナー分野が自力で話題を生むのが難しい状況において、組織的なマーケティング戦略の一環と捉えることもできる。

2023年、JFAとの業務提携を発表した国内最大クラウドファンディング会社のCAMPFIREは「サッカーファミリーのステークホルダーの夢を応援」と説明している(CAMPFIREニュース)。これにより、JFAは従来のスポンサー依存から脱却し、草の根レベルの資金を集めることが可能となった。

今のところ、JFAがクラウドファンディングに乗り出した背景には、組織全体の財政的危機というよりも、特定のニッチな活動分野への資金をファンの共感と参画を通じて獲得する意図があると考えられる。


今後の展望

ただし将来的に、赤字幅の拡大次第ではクラウドファンディング依存度が高まる可能性もあるだろう。JFAの事業計画では、こうした外部資金を多様な資金源の一つとして位置づけており、イベントごとにクラウドファンディングが活用される構図は今後も続くとみられる。

JFAは、既存の予算を圧迫することなく、次世代育成やマイナー分野の未来への投資を確保しつつ、最も重要な資産であるファンとの結びつきを強化する、一挙両得の施策としてクラウドファンディングを活用している。今後、JFAがどのような分野でこの共創の仕組みを広げていくのか、その動向が注目される。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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