2024シーズンの明治安田J1リーグで台風の目となった町田ゼルビア。開幕から5戦負けなしで首位に立つと、途中セレッソ大阪やヴィッセル神戸にその座を譲ることもあったが、第15節で再び首位につけて第28節までその座を守り続け、“J1初昇格即初優勝”という夢をサポーターに示し続けた。
ロングスローを筆頭としたセットプレーと、ハイプレスからのダイレクトプレーでゴールを目指すサッカーが黒田剛監督の下チーム全員に浸透し、相手の弱点を突くスカウティングも相まって、J1の強豪を次々に撃破していった町田。その結果が19勝10敗9引き分けで勝ち点66の3位という結果につながったのだが、シーズンの半分以上を首位で過ごした事実を見ると、その健闘ぶりと同時に“もったいなさ”も感じてしまう。
8月25日の第28節アルビレックス新潟戦でスコアレスドローとなり、翌週8月31日の第29節浦和レッズ戦で敗色濃厚な中後半アディショナルタイムに追いつき2-2の引き分け、サンフレッチェ広島に首位の座を明け渡してしまう。9月14日の第30節アビスパ福岡戦(3-0)で快勝し再び首位に立ったが、9月21日の第31節北海道コンサドーレ札幌戦(0-0)から11月3日の第35節サガン鳥栖戦(1-2)まで5戦勝ち無し(3敗2引き分け)で、神戸にも抜かれ3位に転落。11月9日の第36節FC東京戦(3-0)、11月30日の第37節京都サンガ戦(1-0)と持ち直し、最終節まで逆転優勝の可能性を残したものの、鹿島アントラーズに1-3で完敗し、夢はここで潰えた。しかし3位に入ったことで、来シーズンはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に出場することになる。
とかくピッチ外での話題には事欠かなかった町田だが、ここではチームそのものにフォーカスし、開幕からの快進撃と終盤戦の大ブレーキを、来2025シーズンへの展望と共に検証したい。
開幕快進撃の要因となった選手たち
町田は選手・スタッフによる投票により主将に任命されたDF昌子源を負傷で欠く中、2月24日開幕戦のガンバ大阪戦(町田GIONスタジアム)を迎えたが、その穴を2023シーズンから所属しJ2優勝に大きく貢献したDFチャン・ミンギュが見事に埋めてみせ、5節終了時点でわずか3失点という強固な守備力によって、開幕ダッシュに成功した。
またチャンは、DFドレシェヴィッチの負傷欠場時にもその穴を埋め、貴重なバックアッパーとして欠かせない存在だった。攻撃陣ばかりに目が行きそうだが、DF陣のみならず守備時の切り替えも早く、「全員守備」の意識がチーム全体に行き届いていたことが、快進撃の大きな要因となっていた。
前線では、FWオ・セフンとFWナ・サンホの韓国人2トップが開幕スタメンを張ったが、ナ・サンホがG大阪戦の前半で負傷交代してしまう。そのピンチをチャンスに変えたのが、FW藤尾翔太だ。セレッソ大阪の下部組織出身ながら、2021シーズンに水戸ホーリーホック、2022シーズンに徳島ヴォルティスとレンタル移籍を繰り返し、2023シーズンに当時J2の町田に加入。33試合8得点をマークし、J1昇格に貢献。そして2024シーズン完全移籍に移行した苦労人でもある。
また、2023年8月に前十字靭帯断裂の重傷を負ったFWエリキも、5月3日の第11節柏レイソル戦で復帰。徐々に出場時間を増やしながら、8月31日の第29節浦和戦では、後半36分から投入され、後半アディショナルタイムのラストプレーで同点ゴールを決めるなど、印象に残るプレーを見せた。
加えて山梨学院大時代の2021-2022年に特別指定選手としてプレーし、2023年に正式に入団、通算70試合に出場したFW平河悠も右インサイドハーフとしてチャンスメイク。オーストラリア代表でもあるFWミッチェル・デュークも33歳という年齢を感じさせない運動量で、チームを下支えした。
強豪の宿命でもあるのだが、W杯予選のため代表選手を抱えるチームは、度々主力の離脱を余儀なくされる。デュークは母国の代表ではレギュラーだ。しかし、オ・セフンが韓国代表に初招集され、いきなりW杯アジア最終予選で2戦連発と結果を残しレギュラーポジションを奪ったことは、さすがの黒田監督にとっても嬉しい誤算だったに違いない。
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