
日本プロサッカー選手会(JPFA)主催のトライアウトは、Jクラブを契約満了となった選手やJクラブ入りを目指すアマチュアチーム所属選手が、各クラブにアピールするために毎年開催される。今年は12月11、12日に、カンセキスタジアムとちぎで行われ、初日62選手、2日目31選手の計93選手が参加した。
トライアウトと聞くと、どうしてもプロ野球(NPB)の年末恒例のドキュメント番組によって、戦力外通告を受けた選手が現役続行を懸けた“生きるか死ぬかの闘い”といったイメージが強い。しかし、Jリーグのトライアウトの昨年のデータを参考にすると、参加者92人に対し、移籍先あるいはコーチなどのクラブスタッフといった再就職先を得た選手は85人にも上る。
ここでは、Jのトライアウトの参加選手や、その機能についてプロ野球との比較で検証する。

実績と素質を兼ね備えた参加選手たち
最年少参加者は、弱冠20歳のFW齋藤来飛。2022シーズンにジェフユナイテッド千葉のU-18(ユース)から昇格を果たしたもののトップチームでの試合出場がないまま、JFLのラインメール青森に育成型期限付き移籍し今2024シーズンは得点ゼロに終わった。現時点では千葉からも青森からも、契約満了のリリースはないものの、自ら新天地を求めての参加であると思われる。
千葉U-18時代には、U-17日本代表候補にも選出された齋藤。身長164センチと小柄だが、貴重なレフティーのテクニシャンとあって、環境を変えればブレークするポテンシャルを秘めている。
一方で、最年長は36歳のFW野田隆之介。こちらはJ3のFC琉球から契約満了を告げられたものの、年齢を感じさせない動きを見せアピールした。野田は湘南ベルマーレ時代の2018シーズン、初優勝したルヴァン杯で準々決勝第1戦に先発出場しているタイトルホルダーだ。
他にも、元プロ野球選手の高木豊氏を父に持つFW高木俊幸も、千葉から契約満了通告を受けたことでトライアウトに初参加。東京ヴェルディユース時代にはU-18日本代表に選出され、ユース所属ながらプロデビューも果たし、弟2人もJリーガー(アルビレックス新潟・高木善朗、レノファ山口・高木大輔)の高木は、2016年のルヴァン杯では大会得点王に輝いた実績もある33歳だ。
2代理人を通じてオファーを待つ手もある中、「少しでも可能性を広げたいし、自分のプレーを見てもらいたい」とあえてトライアウトに挑んだ高木は「殺伐とした雰囲気と聞いていましたが、周りの選手に恵まれ、一体感があってとても助けられました」と笑顔で振り返った。そして「やりがいがあるのであれば、カテゴリーにこだわりはない」とも語っている。
また、レンタル移籍先のV・ファーレン長崎と保有元の名古屋グランパス双方から契約満了を告げられ退団した23歳のDF成瀬竣平も参加。名古屋U-18育ちで、同期には日本代表DF菅原由勢(サウサンプトン)やDF藤井陽也(コルトレイク)がおり、2018年3月には17歳2か月1日の若さでJリーグデビュー。これは現在に至るまで名古屋におけるクラブ最年少記録だ。

参加選手の移籍先
ギラヴァンツ北九州を退団し、昨年のトライアウトに参加したGK吉丸絢梓は、福島ユナイテッドに拾われただけではなく2024シーズン開幕スタメンに名を連ねた。全38戦中36試合でゴールマウスを守り、福島のJ2昇格プレーオフ進出に大いに貢献した。
さらに、移籍先を見つけた選手のほとんどがカテゴリーを下げている中、2015シーズンオフにJ2の千葉から契約満了を告げられたMF田中佑昌は、トライアウトに参加した結果、当時J1のヴァンフォーレ甲府への加入が決まるという“個人昇格”を果たしたケースまである。
加えて、2015シーズンオフに16試合出場1得点という結果を出しながらも、当時J2のギラヴァンツ北九州を契約満了となったFW大塚翔平も、トライアウトがきっかけで川崎フロンターレの目に留まり、練習参加を経て入団。当時はまだJ1優勝まであと一歩の“シルバーコレクター”だったが、強豪の一角となりつつあった川崎にあって、一時はレギュラーポジションをつかんだ。
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