Jリーグ 水戸ホーリーホック

清水昇格をまたしても阻止!水戸が“J2の番人”と呼ばれる理由

水戸ホーリーホック 写真:Getty Images

四半世紀に渡る“J2の番人”水戸

水戸の歴史を紐解くと、その誕生は1994年に遡る。1994年に創設の市民クラブ「FC水戸」と、1997年に旧JFL昇格が決定していたものの廃部した「プリマハム土浦FC」が合併して現在の体制が固まったクラブだ。

1999年、J1参入決定戦で敗れた2クラブ(川崎フロンターレ、北海道コンサドーレ札幌)と、1998年のJFL参加クラブのうちJリーグ入りを希望していた8クラブ(ベガルタ仙台、モンテディオ山形、大宮アルディージャ、FC東京、ヴァンフォーレ甲府、アルビレックス新潟、サガン鳥栖、大分トリニータ)の計10クラブによって発足したJ2に、翌2000年、現在のJFLにおいて年間3位で昇格している。

以来、水戸は四半世紀に渡りJ1に昇格することはできていない。幾度にも上る経営危機や、2011年の東日本大震災による本拠地・ケーズデンキスタジアム水戸の被災。さらには2019年には11年間にもわたるクラブスタッフへの残業代未払いの発覚など、“J史上最貧クラブ”という有り難くないレッテルを貼られた過去もある。

2014年に創設されたJ3への降格も“時間の問題”といわれていたが、この頃から、地道な努力が実を結び、自治体からのバックアップも受けながら経営が好転し始める。観客動員も増加の一途を辿り、新型コロナのあおりを受けながらも何とか持ちこたえ、2023年度(2023年2月1日~2024年1月31日)の営業収入は約11億円を計上し、過去最高を更新。純利益でも堂々の2期連続黒字経営だ。

戦力的には、J1クラブから戦力外になった選手や若手のレンタル選手が中心で、毎年のように多くに選手が入れ替わりながらも安定的な成績を残し続け、ピッチ内外において、とにかく「堅実」という言葉がピッタリのチーム運営・経営を貫き通している。

今季も一時期、9試合(3月2日の第2節甲府から4月13日第10節栃木SC戦まで)勝利がなく、J3降格圏に順位を落としていたが、気が付けば第34節終了時点で18位の栃木SCと勝ち点差9(15位)をつけ、残留をほぼ確実にしている。


水戸ホーリーホックのサポーター 写真:Getty Images

「J1に行くなら、我々を倒してから行け」

今季水戸が勝利した試合の中には、5月12日の山形戦(NDソフトスタジアム山形/1-0)や、8月3日の長崎戦(トランスコスモススタジアム長崎/2-1)といった、敵地での“上位イジメ”が含まれていることも“J2の番人”を印象付けるには十分だ。

県内に鹿島アントラーズというビッグクラブが存在しながらも、決して張り合おうとせず、ひたすら我が道を行くその姿勢はまさに「番人」と呼ばれる最大の理由。順位的には中位が指定席でありながらも、昨季と今季のホーム清水戦に見られるように、上位戦線を引っ掻き回す、他クラブにとっては厄介なチームだ。

水戸のサポーターや選手・関係者には怒られそうだが、傍目から見て、来季以降も水戸がJ1昇格争いに加わる可能性は高くないだろう。

しかし、清水戦で見せた逞しさは、選手が入れ替わろうが、クラブのカラーとして脈々と受け継がれていくと感じさせる。そして今回、清水サポーターが味わった「J1に行くなら、我々を倒してから行け」という無言のメッセージを発信し続けることこそ、水戸ホーリーホックの存在価値だと思えるのだ。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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