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ソニー仙台FCの解散で明らかになった“実業団サッカー”の限界

ソニー 写真:Getty Images

Jリーグの優勝・残留争いが佳境を迎える中、9月27日、サッカー界に衝撃的なニュースが流れた。1968年発足の“アマチュアの名門”であるソニー仙台FCの、今2024シーズン限りでのJFL(日本フットボールリーグ)退会と解散が発表されたのだ。

ソニー仙台は、プロリーグと区別するために1992年に発足し1998年にその役目を終えた旧JFL(ジャパンフットボールリーグ)に参戦し、その後に改組され1999年に発足した現在のJFLにも初年度から参戦している。

現在のJFLで初年度から活動を続けているのは、ソニー仙台の他に、静岡県浜松市と本拠地とし天皇杯では毎年のようにJクラブを撃破する強豪のHonda FC(本田技研工業フットボールクラブ)、東京都武蔵野市を本拠地とする横河武蔵野FCの、3クラブのみだ。

Honda FC同様に「Jリーグを目指さない地域密着型クラブ」を標榜し、実業団クラブながらも下部組織も有していたソニー仙台。同クラブの解散は、1つのサッカークラブの消滅だけにとどまらない影響を、地元や日本のサッカー界にもたらすことは間違いない。


サッカーボール 写真:Getty Images

実業団チームにおける働き方モデルに変化

特に、地域のサッカーコミュニティーの崩壊、育成クラブの消滅、そしてアマチュアクラブ経営の在り方という面で、ネガティブな影響は免れない。「仙台にはベガルタがあればいいじゃないか」という声もあろうが、事はそんなに単純なものではない。

解散発表前からその気配はあった。ソニーグループの電子機器製造会社がブルーレイディスクなどの記録メディア事業から撤退し、宮城県多賀城市にある工場で、約670人の従業員の4割にあたる250人程度の人員削減を行うことを発表していたのだ。

まず、「ソニー」と聞けば、デジカメやスマホ、テレビやブルーレイレコーダーなどのデバイス機器をイメージするだろうが、グループ全体の中で、現在その割合は約30%程度に過ぎない(※ソニーグループ株主向け2023年度報告書参照)。今や主力事業は「プレイステーション」に代表されるネットゲーム事業や音楽配信、映画製作および配給、銀行業、保険業にシフトしているのだ。

家電や電子機器製造事業を縮小させる中、「午前は工場で働いて、午後から練習」といった実業団チームにおける選手の働き方のモデルも根底から崩れつつある。

その傾向は、サッカーに限った話ではない。社会人野球界では、それが顕著に表れている。社会人野球の最高峰の大会は、戦前からの歴史がある「都市対抗野球大会」だが、予選に参加した企業チームは1978年に179あったものの、2021年には97にまで減少している。その間、バブル崩壊などで廃部に追い込まれたチームは枚挙に暇がない。

今回、解散するソニー仙台や、Honda FCは、こうしたチーム運営をモデルとしている。よって、ネットで多く聞かれた「時代の流れ」といった声も“むべなるかな”といえよう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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