Jリーグ 湘南ベルマーレ

湘南ベルマーレ、昨季の悪癖またも露呈でJ2降格危機に。敗北のC大阪戦を検証

鈴木淳之介 写真:Getty Images

湘南が犯したミスとは

前半12分、MF阿部浩之による右サイドからのフリーキックにFW鈴木章斗がヘディングで合わせ、湘南に先制点をもたらす。ホームチームは幸先の良いスタートを切ったものの、ひとつのミスでC大阪に試合の主導権を渡してしまった。

迎えた前半21分、センターバック鈴木淳之介から左ウイングバック畑への縦パスをL・フェルナンデスにカットされる。そのままL・フェルナンデスに左サイド(C大阪にとって右サイド)を突破されると、同選手のラストパスに反応したレオ・セアラに同点ゴールを奪われてしまった。

この場面ではセンターバック鈴木淳之介とウイングバックの畑が自陣後方タッチライン際で追いつめられたうえ、この2人が一直線に並んでしまったことでパスコースが無くなっている。3バックの一角がペナルティエリアの横幅からはみ出し、なおかつウイングバックが自陣後方タッチライン際に立った状態でショートパスを繋ごうとした結果、相手のハイプレスを浴びてボールを失う。これは昨2023シーズンや今季序盤戦にも見られた湘南の悪癖であり、同クラブはまたしてもこのミスを犯している。チーム全体の攻撃配置が悪かったため特定の選手が責められるべき場面ではないが、縦のパスコースが無かった状況を踏まえると鈴木淳之介はL・フェルナンデスに捕捉されていた畑へのパスではなく、自身の斜め後ろに立っていた味方DFキム・ミンテへのバックパスを選択すべきだった。

前半24分にはC大阪MF田中駿汰(ボランチ)のロングパスに反応したレオ・セアラが湘南最終ラインの背後を突き、ゴールゲット。ここでは味方センターバック付近でボールを受けた田中駿汰への湘南FW鈴木章斗の寄せが緩く、それゆえ簡単にロングボールを繰り出されている。パスの出し手にプレスがかかっていないにも関わらず、湘南最終ラインの位置取りが高かったため、レオ・セアラの突破も許してしまった。


平岡大陽 写真:Getty Images

悔やまれる1失点目

湘南は今節も攻撃配置の悪さから失点を喫したものの、試合序盤以外にも自陣後方からのパス回しに成功したシーンがあった。

この最たる例が、前半29分の攻撃シーン。自陣ペナルティエリア手前で鈴木淳之介がボールを受けると同時に、ウイングバックの畑が自陣へ降りる。ここで鈴木淳之介が畑にパスを出すと思いきや、同選手は左サイドを駆け上がった平岡へのロングパスを選択。この場面ではC大阪の右サイドバック奥田が畑を捕まえるべく飛び出していたため、同選手の背後が空く形に。ここへ走った平岡が鈴木淳之介のロングパスを受けたことで、湘南の速攻が始まった。

センターバックが自陣へ降りてきたウイングバックへパスを出すと見せかけ、その奥のインサイドハーフへロングボールを送る。この攻撃は湘南が最終スコア2-1で勝利したJ1リーグ第12節(サガン鳥栖戦)でも繰り出されたものであり、この試合では湘南DF大野和成(センターバック)がウイングバックの畑へパスを出すと見せかけ、平岡へロングパスを供給。ここから阿部の決勝ゴールが生まれている。今節のC大阪戦では得点に結びつかなかったが、鳥栖戦と同じくウイングバックを囮(おとり)とする攻撃を繰り出せたことは、湘南にとってポジティブな要素と言えるだろう。良い攻撃もできていただけに、センターバックからウイングバックへのパスを奪われたことで喫した今節の1失点目は悔やまれる。湘南としてはこの失敗を糧にしたいところだ。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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