Jリーグ 湘南ベルマーレ

同じ守備エラーを繰り返した湘南ベルマーレ。敗北の名古屋戦を検証

田中聡(左)三國ケネディエブス(右)写真:Getty Images

2024明治安田J1リーグ第28節の計9試合が、8月24日と25日に各地で行われた。湘南ベルマーレは24日、本拠地レモンガススタジアム平塚にて名古屋グランパスと対戦。最終スコア0-1で敗れている。

7月の公式戦4試合全勝と一時復調したものの、直近の公式戦3連敗と苦境に陥った湘南。今節終了時点でJ2リーグ降格圏(18位以下)との勝ち点差1の17位と、依然として危険水域に沈んでいる。

かねてより湘南が解決できていない問題と、名古屋戦の敗因は何か。ここではこの2点を論評する。


三國ケネディエブス 写真:Getty Images

止まらないセットプレーでの失点

最終スコア2-3で敗れた8月21日の天皇杯4回戦(ガンバ大阪戦)と今節の共通点は、相手コーナーキックから決勝ゴールを奪われていること。天皇杯では後半31分にG大阪DF中谷進之介、名古屋戦の前半7分にはDF三國ケネディエブスのヘディングシュートを浴び、これにより湘南は連敗を喫している。

湘南は相手コーナーキックの際にゾーンディフェンス(※1)を敷いているが、2失点とも守備網の外側からゴール前へ侵入してくる相手選手を捕捉できていない。ゴール前で立ち止まった状態から守備をする湘南の選手と、勢いをつけてゴール前へ侵入してくる相手選手とでは、競り合いにおいて後者に分がある。これがゾーンディフェンスの難点であり、湘南は今節もこの問題を克服できず。同じ守備エラーを繰り返してしまった。

「今の守備のやり方は変えずに、それを磨き上げるという方針か」。天皇杯4回戦終了後、筆者はミックスゾーンにて湘南MF田中聡へこのような問いを発し、「そうですね。もっとボールにタイトに行ければ失点は減ると思います」と同選手は答えている。ゾーンディフェンスの練度を高めることを誓っていたが、シーズン終盤に差し掛かっても同じような失点を繰り返している事実をふまえると、選手個々の注意力不足にこの問題を帰結させるべきではないと筆者は考える。ニアポスト(ボールから近い方のゴールポスト)付近にクロスボール弾き返し要員をひとり立たせるとともに、ゴールエリアのライン上(ゴールラインと平行な線)にゾーンディフェンス要員を2人ほど立たせる。これに加え残りの選手をマンマーク守備にあてるというように、ゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンス要員の割り当てを工夫する必要があるだろう。

前述の2失点に限らず、今季J1リーグで湘南はセットプレー(※2)から多くの失点を喫しており、これが勝ち点取りこぼしの一因となっている。セットプレーの守備の練度向上が急務だ。

(※1)各選手が自分の担当区域に入ってきた相手選手をマークする守備戦術。
(※2)コーナーキックやフリーキックなど、試合再開に際しボールをセットして行うプレーのこと。


湘南ベルマーレvs名古屋グランパス、先発メンバー

ロングパスでチャンス創出

今節における両チームの基本布陣は、湘南が[3-1-4-2]で名古屋が[3-4-2-1]。キックオフの笛が鳴るやいなや、湘南MF鈴木雄斗(右ウイングバック)が敵陣へ攻め上がると見せかけ、自陣で味方DF髙橋直也の横パスを受ける。この場所から鈴木雄斗がロングパスを繰り出し、これが味方FWルキアンに繋がると、その後敵陣右サイドで再びボールを受けた鈴木雄斗のクロスからルキアンのシュートチャンスが生まれている。名古屋の選手がゴール前のルキアンを捕捉できていなかっただけに、湘南としては物にしたいチャンスだった。

名古屋がFWキャスパー・ユンカーと山岸祐也の両FW、及びMF森島司の計3人(1トップと2シャドー)で湘南3バックによるボール運びや配球を妨害したため、ホームチームは試合序盤にロングパスでの局面打開を試みる。前半3分には湘南MF茨田陽生(インサイドハーフ)が名古屋の最終ライン背後へロングパスを送り、これが最前線のルキアンに繋がりかける。相手GKランゲラックの飛び出しに阻まれたが、基本的にGKが飛び出しづらい3バックの両脇の選手の背後へ茨田がロングパスを送ったことで、湘南がチャンスを迎えている。試合序盤は湘南のロングパス攻勢が効いていた。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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