ここ1年、海外で最も評価を上げた日本のサッカー選手はブライトン・アンド・ホーブ・アルビオンに所属する日本代表MF三笘薫だろう。2022年FIFAワールドカップカタール大会での「1mmアシスト(スペイン戦2-1のMF田中碧の決勝ゴール時)」は世界中で議論の対象になり、2022/23シーズンのプレミアリーグでは日本人選手の歴代最多得点記録を更新した。
2021年夏、川崎フロンターレから2025年6月末までの4年契約でブライトンに加入した三笘は、ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズへの期限付き移籍を経験し、昨2022年夏にレンタルバック。リーグ戦33試合で7ゴール5アシストを記録し、圧倒的なパフォーマンスを披露した。
ブライトン加入時にはまだ無名だった三笘は、今では国内外で多くの注目を集めるまでになった。ここではそんな三笘の1年前と現在の評価やインタビューコメントを比較しながら、三笘自身に見られる変わらないものについて紐解いていこう。
2022/23シーズン、ブライトン加入時の状況
2022年7月7日、ブライトンは、三笘のレンタルバックを公式SNSで発表した。その投稿に寄せられたメッセージは、現地サポーターからのものは少なく大半が日本人からだった。もちろん当初はプレミアリーグ公式SNSでは、三笘に関する内容の投稿は全くされていない。
2022年8月7日、2022/23シーズン開幕戦のマンチェスター・ユナイテッド戦(2-1)。左の攻撃的なポジションを務めたのはベルギー代表FWレアンドロ・トロサール(現アーセナル)だった。2-1でリードしていたブライトンは75分に同選手を交代させるも、選ばれたのは三笘ではなくDFタリック・ランプティであった。三笘が得意としている左サイドで、2番手にも選ばれない厳しい現実が突きつけられた。
同試合で次に三笘がピッチに登場するチャンスは、右の攻撃的ポジションでプレーするMFソリー・マーチが交代する時だった。しかし、当時ブライトンを指揮していたグレアム・ポッター監督が選んだのはDFレヴィ・コルウィル(現チェルシー)だ。チームは守備的な選手を投入し、そのまま試合を終わらせる手段を選んだ。
デビューで三笘らしさ発揮開始も満足せず
続く2022/23プレミアリーグ第2節(2022年8月13日)ニューカッスル・ユナイテッド戦(0-0)。先発出場はやはりトロサールだったが、スコアレスで迎えた75分、攻撃に変化が必要な場面でついに三笘が選ばれた。
プレミアデビューを果たした三笘は、同試合でビッグチャンスを演出。得意のドリブル突破から中央へ折り返し、決定的なチャンスを作り出した。これ以外にもインパクトを残し、チームの攻撃を活性化させた。三笘がピッチに投入されてからチームが攻勢になったのは明らかだった。
同試合後、ポッター監督は「DFには悪夢だろう。私なら対戦したくない」と三笘の活躍を称えた。地元メディア『サセックス・ライブ』は、三笘にチーム最高タイの8点(10点満点)をつけ「速さとポゼッション時のつかまえにくさで、即座に左サイドにインパクトを与えた。決勝点になっていたはずのグロスのシュートをお膳立て。とても有望な選手だ」と評価。『サセックス・エクスプレス』もチーム最高タイ8点の評価で「守備陣には厄介な存在。サポーターをすぐに座席から立ち上がらせた」とした。
三笘本人は「1つは夢がかなった。そこはうれしい」と初出場を喜ぶ一方で、「もう少し出たかったというのが本音。1つチャンスをつくれた。こういうのを続け、もっと信頼を得られるようにしないと。できるところを少しは見せられたので、これからどれだけ結果を出せるか」と自身のプレーを振り返り、現状に満足していない様子だった。
デ・ゼルビ監督就任直後に初先発も課題を上げ
デビュー戦で高評価を得た三笘だが、先発には選ばれず途中出場が続いていた。すると同シーズン、プレミアリーグ第5節を終えた後の2022年9月18日に、ブライトンに変化が訪れる。2019/20シーズンからチームを指揮していたポッター監督がチェルシーに就任し、後任にロベルト・デ・ゼルビ監督が就いた。
足首の負傷もあって出場時間は限られていた三笘。しかし第14節のチェルシー戦(2022年10月29日)でついに初先発を果たす。すると同試合で初アシストを記録。チームも4-1で勝利し、就任後2分3敗と勝利のなかったデ・ゼルビ監督に初勝利をプレゼントした。
同試合後、デ・ゼルビ監督は三笘についてこう評している。「最初の20分から25分は、ボールを持っている時も、持っていない時も素晴らしかった。私が好む強度でプレーしていた。1対1の場面が多くあり、ミトマと(ソロモン・)マーチが良くやっていたね。トロサールはファンタスティックだったし、(アダム・)ララーナもそうだ。彼らはみんな傑出していた」
『サセックス・ライブ』は、採点で7点をつけ「スピードとプレス、足技でチェルシーのバックラインを脅かし、初先発が間違っていなかったと証明した。時間とともに消えていったが、信頼できるパフォーマンスだった」と評価した。
同試合後のインタビューで三笘は、やはり全く自身のプレーに満足していない様子だった。「後半自分のところもそうでしたけど、90分通して支配できなかった。アシストは付きましたけど、そこまで良いプレーも多くなかったですし、フィジカル的にも結構きついなかでやっていたので。出来は及第点ぐらいですけど、もっと上がると思います」と冷静に自身を評価した。
また今後の自身の課題については「周囲との連携」と「90分インテンシティを高く保ち続けること」と分析。さらに「もっとペナルティエリアに入って行くところが求められている。まだスタメンになりきれていないところがある。全然課題は多いです」と答えていた。
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