意図的な継続路線を採れている
そして2023シーズン、福岡は前評判の低さを覆すとともに、J1で3年目を迎えたことによる効果を発揮してきている。まず、スタッフや主力選手のほとんどをチームに残せており、意図的な継続路線を採れていること。一見地味にも見え、前評判の低さの理由でもあるのだが、チームの柱を作り直すことなくピンポイント補強で肉付け、という堅実な強化を図れている。
加えて、成績のみが要因ではないものの、過去には良好とはいえない時期もあった福岡県内の強豪校との関係も改善。九州随一の実績を持つ福岡大学から、FW鶴野怜樹、GK菅沼一晃、MF重見柾斗と2年間で3人の加入が発表されたのは偶然ではない。
地元では動員数に課題も
ただし、福岡に関するすべてが順調というわけではない。見事な成績とは裏腹に、ホームのベスト電器スタジアムの平均観客動員数が、第7節終了時点で7,153人であること。これはリーグ最下位の数字だ。劇的な勝利が多くサポーターで沸くスタジアムには、一方で空席が目立つ。
福岡にはプロ野球の人気球団である福岡ソフトバンクホークスが存在するが、福岡市でタクシーに乗ると「ホークス勝ったばい」と言われるのは福岡あるあるの1つ。その人気に押され、在福メディアでアビスパ福岡について報じられる機会は少ない。喜びに満ち溢れるサポーターと、試合結果や順位を知らない多くの県民の間には垣根があるのが実情だ。
とにかく勝って、タイトルを取る
ただし、注目を集める手段がないわけではない。福岡県民は「勝ち馬に乗る」傾向があると言われる。実際に、前述のホークスも1999年の優勝以降、福岡での人気が定着した。観客動員数も増え、2001年には初めて年間300万人を突破した。
注目を集める特効薬はとにかく「勝つ」こと。さらにいえば「タイトルを取る」ことだ。18チーム(2024シーズンからは20チーム)が争うJ1リーグ、20チームが出場するYBCルヴァンカップ、本戦に88チームが出場する天皇杯、いずれもタイトルを取るのはもちろん容易ではないだろう。
それでも、このスポーツに不可能はない。2004年のユーロ(UEFA欧州選手権)でのギリシャ優勝、プレミアリーグ2015-16シーズンのレスター・シティ優勝など、不可能と思われながら実際に「奇跡」を起こした例はいくつも存在する。昨2022年にも、第102回天皇杯をJ2リーグ所属のヴァンフォーレ甲府が制した。
険しい道のりであるが、タイトル獲得が実現できたときには福岡における「アビスパ福岡」の存在感は一変するはずだ。「今日、アビスパ勝ったばい」福岡の街で、その言葉を当たり前のように聞けることを願ってやまない。
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