セリエA

ナポリから漂う独走の気配。アタランタのマンツーマン守備も超越【試合分析】

ジョバンニ・ディ・ロレンツォ(左)スタニスラフ・ロボツカ(中)マティアス・オリベラ(右)写真:Getty Images

2022/23シーズンのセリエA第13節が11月6日(日本時間)に行われ、同リーグ首位のナポリと2位アタランタが対戦。

前半16分にアタランタがコーナーキックのチャンスを迎えると、DFラファエウ・トロイのヘディングが、相手FWビクター・オシムヘンのペナルティエリア内におけるハンドの反則を誘発。これにより得たPKをFWアデモラ・ルックマンが物にし、アタランタが先制した。

試合序盤に失点したものの、ナポリは持ち前のパスワークでリズムを掴み、前半23分にショートコーナーを繰り出す。MFピオトル・ジエリンスキのクロスにオシムヘンがヘディングで合わせて試合を振り出しに戻すと、同35分には速攻から左ウイングFWのエリフ・エルマスがゴールを挙げ、逆転に成功。このリードを守りきったナポリが、2-1で首位攻防戦を制している。

アタランタの緻密なハイプレスを、ナポリがいかに攻略したのか。今回はこの点を中心に分析する。


セリエA第13節、アタランタvsナポリのスターティングメンバー

ナポリのパスワークを下支えしたのは

お馴染みの[3-4-1-2]の布陣で臨んだアタランタは、基本隊形[4-1-2-3]のナポリのフィールドプレイヤーをマンツーマン守備で捕捉したうえで、ハイプレスを敢行。

相手ボール時に、トップ下のマリオ・パシャリッチがナポリの中盤の底スタニスラフ・ロボツカに張り付いたほか、トゥーン・コープマイネルスとエデルソンの2ボランチが、ジエリンスキとアンドレ・フランク・ザンボ・アンギサを追跡。ナポリの2センターバック、キム・ミンジェとフアン・ジェズスにはルックマンとラスムス・ホイルンドの2トップが睨みをきかせ、イルビング・ロサノとエルマスの両ウイングFWには、アタランタの3バックの両脇ジョルジョ・スカルビーニとトロイが最終ラインから飛び出して応戦した。

ナポリ DFマティアス・オリベラ 写真:Getty Images

アタランタが得意とするマンツーマン守備に対し、ナポリはジョバンニ・ディ・ロレンツォとマティアス・オリベラの両サイドバックを起点とするパスワークで、局面打開を図る。マイボール時にこの2人が適宜タッチライン際から内側にポジションを移し、アタランタの両ウイングバック(ヨアキム・メーレとハンス・ハテブール)によるチェイシングの直撃を受けにくい状況を作ったことで、ナポリのパスワークが手詰まりにならなかった。

特に効果的だったのが、オリベラのハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)でのボール保持や、ここを使った攻め上がり。アタランタの2ボランチの一角コープマイネルスはジエリンスキをマークしていたため、この25歳のウルグアイ人DFに寄せられず。右ウイングバックのハテブールも、大外のレーンをあけ渡したうえでハーフスペースの守備に出向くのは難しく、度々自陣に釘付けに。センターバックのトロイも、最終ラインから飛び出してオリベラにアプローチするのを躊躇していた。

ナポリ DFジョバンニ・ディ・ロレンツォ 写真:Getty Images

オリベラに負けず劣らず、右サイドバックのディ・ロレンツォも要所を押さえたプレーでナポリの勝利に貢献。前半4分すぎにはロサノやオシムヘンとのパス交換から右サイドを突破し、チャンスメイク。自軍を勢いづけた。

ナポリの決勝ゴールも、ディ・ロレンツォが自陣後方からザンボ・アンギサにロングボールを送ったことで生まれたもの。

この場面ではアタランタの左ウイングバックのメーレ、及びセンターバックのスカルビーニがディ・ロレンツォや自陣に降りてきたロサノによって釣り出されており、これにより空いたアタランタの最終ラインの背後にオシムヘンが走ってアシストを記録している。今シーズンより主将を務めている29歳のイタリア人DFを起点に、アタランタのハイプレスを逆手に取ってみせた。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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