Jリーグ

継承され進化した湘南スタイル。盤石の試合運びでFC東京撃破【J1試合分析】

湘南ベルマーレ 山口智監督 写真:Getty Images

的確だった山口監督の人選や采配

正確無比なミドルシュートで自陣に引きこもる相手を攻略できる阿部と、得点パターンが豊富で、時折見せる強引なドリブルも魅力の町野が、途中出場からそれぞれゴールゲット。山口監督のベンチワークが冴え渡ったが、なかでも秀逸だったのが3センターバックの人選だ。

FC東京の3トップのプレスに晒されながらも、山本、杉岡大暉、舘幸希の3センターバックはビルドアップの起点として機能。特に右のセンターバックを務めた舘は、リーグ戦4試合ぶりとなる先発起用に応えた。

前半5分40秒以降の湘南の攻撃は、自陣でボールを受けた舘がレアンドロのチェイシングをいなし、右サイドへパスを繋いだことから始まっている。その後平岡へのスルーパスが繋がり、最終的にはタリクがペナルティエリアの手前からシュートを放っている。舘のビルドアップ能力や突破力の高さが窺える場面だった。9月7日の横浜F・マリノス戦(J1第25節)で失点に直結するボールロストをしてしまった同選手の復調は、チームにポジティブな影響をもたらすだろう。

湘南ベルマーレ FWウェリントン 写真:Getty Images

また、今節先発したウェリントンとタリクの2トップも、それぞれの持ち味を遺憾なく発揮。空中戦に強い前者が競ることで生まれるこぼれ球を、機動力のある後者が拾おうとする場面が度々見られたほか、長身のウェリントンはFC東京陣営のハイプレスに晒されていた湘南の最終ラインにとって、お誂え向きなボールの預けどころになった。

的確な人選で湘南に貴重な勝ち点3をもたらした山口監督。ハイプレスからのショートカウンターが強力なFC東京に対し、独力で相手のチェイシングをかわすことに長け、パスの精度も高い面々を3センターバックに据えたことが奏功した。今季のリーグ戦残り3試合でも各選手の特長をふまえつつ、ゲームプランに即したスターティングメンバー選びや選手交代を行えるか。これが同クラブの命運を握りそうだ。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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