明治安田生命J1リーグの第31節が10月1日に行われ、セレッソ大阪と湘南ベルマーレが対戦。後半アディショナルタイム2分にFWジェアン・パトリッキがPKを成功させ、C大阪が先制したものの、同5分に湘南のFW阿部浩之がフリーキックから相手のFW加藤陸次樹のオウンゴールを誘発。1-1の引き分けで幕引きとなっている。
J1リーグ残留に向け、貴重な勝ち点1をもぎ取った湘南(現15位)。今季のルヴァンカップ準決勝で浦和レッズを下し、2季連続の決勝進出を果たしたC大阪を相手に、いかにして接戦に持ち込んだのか。ここではこの点を分析する。
守備隊形を使い分けた湘南
この日の湘南は、複数の守備隊形でC大阪に対抗。以前から実践している[5-3-2]の隊形による撤退守備を軸としながらも、ハイプレスをかける際には[5-2-3]に移行していた。この可変守備の要諦は、インサイドハーフの平岡大陽と池田昌生がボールの位置に応じて前線に上がること。
C大阪が右サイドからビルドアップを試みた際は、左インサイドハーフの平岡が前線に上がり、阿部と瀬川祐輔の2トップを含む計3人でハイプレスを敢行。相手の左サイドからのビルドアップに対しては、右インサイドハーフの池田が前線に上がって守備を行っていた。
ショートカウンターによる決定機を数多く作るには至らなかったものの、[5-3-2]と[5-2-3]の2つの守備隊形を使い分け、C大阪の攻撃をサイドからに限定することには成功している。特に前半は相手の2ボランチ(鈴木徳真と奥埜博亮)や、マテイ・ヨニッチと鳥海晃司の2センターバックに余裕のある配球をさせなかった。
前線に3人が並ぶ布陣のため、ハイプレスでボールを奪えればショートカウンターに移行しやすい。相手のボランチが最終ラインに降りて変則3バックを形成した際も、敵陣の深いところで3対3の数的同数を作りながらハイプレスを行える。そのうえ5バックであれば、4バックでは埋めにくいセンターバックとサイドのDFの間や、ハーフスペース(ピッチを縦に5分割した際の、ペナルティエリアの両脇を含む左右の内側のレーン)をケアしやすい。これらが[5-2-3]の強みであり、この日の湘南からは、それぞれの守備隊形のメリットを最大限に活かそうという意図が窺えた。
チョウ・キジェ元監督時代(2012-2019)にも、[5-2-3]とよく似た[3-4-2-1]を基本布陣として採り入れていたが、自陣撤退時に[5-4-1]になることが多く、ボールを奪えてもカウンターに繋がらない試合も少なくなかった。
チョウ監督退任以降は浮嶋敏前監督や山口智現監督のもとで、[5-3-2]の布陣が定着。今後も練度を高める必要があるとはいえ、リーグ戦で上位につけるC大阪を相手に概ね機能した[5-3-2]と[5-2-3]の可変守備は、湘南にとって武器となるはずだ。
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